※カニバリズム注意。


「名前ちゃん、食べていい?」

欠片も笑っていない目で善法寺伊作に言われて息を飲む。
食べる、その言葉が本当に本気で食べたいという意味だと私は知っていた。
伊作のヤンデレ設定はカニバリズム。
つまり、好きな相手を食べ尽くしたいというもの。
美味しく頂いて、相手とひとつになる。
それが私が考えた設定だった。
小説の中でこう言われたヒロインの選択肢は二つ。
意味を勘違いし、食べていいよと言う。
もう一つは善法寺の目に宿る狂気に気付いて冗談は止めてと拒否する。
当然、食べていいよと答えれば善法寺伊作ヤンデレエンド決定だ。

「五体満足でいたいから無理」
「…名前ちゃんは甘そうだよね」
「脂肪分は多いと思うよ」
「血が、すごく甘かった」

恍惚の表情で言う伊作はきっと以前、怪我をした私の血を舐めとった時の事を思い出しているんだろう。
ぞっとしながら気を紛らわせようとお茶を一口飲み下す。

「そうやって喉が上下してるのを見ると噛みつきたくなる」
「野生の獣みたいだね」

何とかそれだけ言って笑えば、伊作もふふ、と楽しげに笑みを返してくる。
だけど視線だけは未だに私の喉を捉えていて、隙があれば噛みつこうとしているのは明白だ。
じっとりとした獲物を狙う目に耐えきれず、見ないで、とこぼす。
そうすれば伊作はまたふふ、と笑った。

「だって、本当に美味しそうなんだもの。ああでも名前ちゃんはその目が一番かな」
「………」
「名前ちゃんの目をそっと掬い出して、こびり付いた血や肉を舐めとってから舌の上でゆっくり転がして、飴玉みたいに舐めて、かみ砕く。そしたら中からとろりとした蜜が溢れてきて口の中いっぱいに広がるんだ」
「っ、」
「ね?美味しそうでしょう。想像するだけで涎が出るよ」

うっとりと笑って、伊作は食べたいなあと呟いた。

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