用具委員会の管理する備品の中に、バレーボールが加わった。
昨日までは体育委員会の管轄だった筈なのに、何故か突然これは今日から用具委員会の管轄ですと会計委員長が言いに来たからだ。
意味が分からねえ。

「どういう事なんですか!」
「うーん、なんでだろうね?」

ことり、首を傾げた用具委員長である名字先輩は正直言って頼りない。
もっと言えば用具委員としては役に立たない。
用具の修理をしていればトンカチで手を打ちつけ、針で指を刺し、屋根から落ちる。
倉庫で用具の数を数えていれば棚から用具を落とし、避けようとして他の用具委員にぶつかり、足を捻る。
仕方なく帳簿をつけてもらえば計算を間違え、字を書き間違え、墨をこぼす。
よく六年生になれたな、と思わなくもない。
これで忍務の時は素早く優秀な動きを見せるというのだが、俺にはいまいち信じられない。
伊作は運が悪いだけだが、この名字先輩は要領が悪いから忍務の時はすごいと言われても、と思ってしまうのだ。

いや、今はそんな事はどうでもいい。
今気にするべきなのはバレーボールの管理についてだ。
バレーボールは今まで体育委員会の管轄で、しかもバレーボールが破裂する原因の9割が体育委員会の七松小平太だ。
そんなバレーボールを何故俺たち用具委員会が管理しなきゃならないのか…会計委員長に問い詰めるべきだろう。

「名字先輩、会計に行きましょう。バレーボールの管理は体育委員会でするべきです」
「え?でも体育委員会からも会計委員会からもよろしく頼むって言われちゃったしなあ」
「体育委員長に押し付けられたんですよ!」
「やだなあ、そんな言い方はよくないよ食満くん」

ほわほわと笑みを浮かべて俺を窘める名字先輩を睨みつける。
先輩に対して、と思うがあまりにもこの人は呑気過ぎる。
ただでさえケチな予算しか回されていないのに破損率が高いバレーボールの管理が加わる事のマズさをわかっていると思えない。

「名字先輩、行きますよ」
「ああ待って食満くん、今日は無理だよ」
「何故ですか!」
「今日は作法委員会がフィギュアを借りにくるから運ぶ手伝いをしなくちゃ」
「そんな事を言っているバヤイじゃないでしょう!」

強い口調で言うが、名字先輩は会計に行くのは明日にしようと言って取り合おうとしない。
しかし明日になれば小平太が破裂させたバレーボールが山のように積まれている気がする。
体育委員会委員長で忍術学園の歩く破壊兵器と呼ばれるあの先輩なら面白がってわざと壊しそうだ。
それはマズい。

「名字先輩!」
「食満留三郎、そいつにそれ以上言っても無駄だ。それ以前に会計や体育に言っても無駄。無駄な事をするのはやめておいた方がいい。そんな事をするなら私の美しい姿を見ている方が有意義に決まっている」

名字先輩を何とか促そうとした矢先、作法委員会の委員長と立花仙蔵がやってきた。
仙蔵は俺に憐れみの視線を向けている。
言っておくがお前の所の委員長もたいがいあれだからな!
忍術の腕も女装を除けばうちの先輩の方が一応は上だぞ!
矢羽を飛ばして訴えれば仙蔵の顔がひくりと引きつった。
ざまあみろ。

と、そんな事を言っている間に名字先輩は作法の委員長を連れて用具倉庫の中に入ってしまった。
完全に会計に行く気はないらしい。

「結構数があるから大変だね」
「ああ、まったくだ。さあ君たち、手分けして運んでくれ!」
「台車に積んだ方が良さそうだねえ」
「お前に任せる」

自分で運ぶ気がまったくない作法委員長の態度を気にした様子もなく、台車を用意し始める名字先輩に呆れるしかない。
少しは思う所はないんだろうか。
イライラしながら名字先輩をじとりと睨むが、そんな事には気付きもしないまま先輩は台車にフィギュアを積んでいき、手早く準備を終えた。

「よし、じゃあ行こうか」
「ああ、頼むぞ」
「任せてー」

と、微笑みながら台車を押した次の瞬間。
名字先輩が持っていた台車の取っ手ががこんと外れ、バランスを失った先輩が積んであるフィギュアに突っ込み、更に横転して用具の棚にぶつかった挙げ句棚をぶっ壊して用具が勢い良く降り注いだ。

「…ま、任せられるかあああああ!!!!!」

名字先輩が忍務ではまともなんて、やっぱり信じられない。

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -