くのたまは基本的に委員会には所属していない。
それはくのたまの人数が少ない事や、忍たまとの関係があまりよくない事に起因としている。
けれど私は毒虫や蛇、狼みたいな危険だと言われる生物が大好きだ。
子どもの頃から野山で駆け回って過ごしていた私にとって虫や獣は身近な存在で、危険なばかりじゃない。
虫や獣と触れ合うのは私にとって極当たり前の事だった。
だから入学したばかりの頃、虫と遊んでいた私に当時の生物委員会の委員長が声をかけてくれた時は飛び上がるほど嬉しくて、友だちには反対されたけどそれを押し切って生物委員会に入ったのだ。

その日から、私は毎日一回は飼育小屋に顔を出して虫や獣たちと遊ぶようにしている。
そんな私が同じ学年で動物好きの竹谷くんと仲良くならない筈がない。
竹谷くんも毎日一回は飼育小屋にきていて、会う度に虫や獣の事はもちろん、授業の事や友だちの事、家族の事までいろんな事を話し合った。
もう五年もそうやって過ごしてきた竹谷くんは私の中で恋人とはまた違う、特別な存在なのだった。

そしてそんな竹谷くんの友だちのひとりが最近私に猛烈なアプローチをかけてくる鉢屋三郎くんだ。
その鉢屋くんが今日は何故か生物委員会の活動に参加して竹谷くんにぐじぐじと文句を連ねている。
なんとかして止めたいと思うんだけど…さっき私が止めようとしたら火に油を注いでしまったらしい。
竹谷くんに泥棒猫!とか言い出した鉢屋くんは竹谷くんを締め上げながら半泣きになっていた。

「ど、どうしよう伊賀崎くん!」
「放っておけばいいんじゃないですか」
「ええっ!?で、でも竹谷くんが!」
「名字先輩は黙っていた方が無難かと」

竹谷くんたちに興味のない様子で言った伊賀崎の言う通り、私が竹谷くんの名前を出した途端、鉢屋くんは竹谷くんを締め上げる力を更に強める。
あああ竹谷くんの顔色が!
今日は頼みの綱の不破くんも図書委員会の活動でいないし、私がなんとかしないと竹谷くんの命が危ない!
竹谷くんの生命の危機を感じた私は言葉がだめなら力で!とようやく思い至って、とりあえずがばりと鉢屋くんに後ろからつかみかかる事にした。

「鉢屋くん!もうやめて!」
「え、ええっ!?」
「それ以上したら死んじゃうよ!」
「な、あ、な、な、」

竹谷くんから鉢屋くんを引き離そうと引っ張りつつそう声を荒げると、思いのほかあっさり鉢屋くんは手の力を緩める。
それにほっとして鉢屋くんから離れると、鉢屋くんの顔は驚くぐらい真っ赤に染まっていた。
…なんで?

「鉢屋くん…?」
「わ、私も…」
「え?」
「私も、死んじゃう…」

どさり、倒れた鉢屋くんに私は困惑して、ようやく解放された竹谷くんを見る。
竹谷くんは残念なものを見る目で鉢屋くんを見ていた。

「…ええと、竹谷くん、大丈夫?」
「…おう、ありがとな」
「うん、無事で良かった。…鉢屋くん、どうしようか?」
「ほっとけばいいと思う」

無表情できっぱり言った竹谷くんは獣たちのご飯が入った箱を持ち上げて、私に行こうと促す。
鉢屋くんを放っておいていいものか迷ったけど、普段の様子から考えて大丈夫な気がする。
いつも不破くんにえげつなく殴られても次の日にはピンピンしてるし…。
それに、なによりお腹を空かせて待ってる虫や獣に早くご飯をあげに行きたいし。
…うん、放っておこう!

そう決めて鉢屋くんの事を放置した私は知らない。
このあと生物委員会の後輩たちが鉢屋くんを虫地獄にご案内した事を。
…先輩思いのかわいい後輩たちだと、思う。たぶん。

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