「ミニスカサンタコスの名前はどこにいったんだ?」
「それは小平太の妄想上の私です。現実の私はそんな服は着ません」

ぶっぶーと手で大きなバツを作って見せれば小平太がえー!と不満の声を上げる。
だけど私はそんな小平太のブーイングもなんのその。
全てまるっと無視して作りかけのショートケーキの仕上げに取りかかる。
ふわふわのスポンジにたっぷりの生クリームを塗って、薄く切ったイチゴを配置していけばあっという間にクリスマスケーキの完成だ。
お菓子屋さんで買ってきたマジパンのサンタとトナカイ、それからチョコプレートも飾ってある。
本当は買って済ませようとしたのを小平太が手作りがいいと駄々をこねたので、仕方なく一から手作りにしたのだ。

まあそんな風に駄々をこねた張本人は今現在、私がミニスカサンタコスをしないとかいうどうしようもない理由で拗ねてる訳だけど。

「ねえ小平太、クリスマスケーキ出来たから食べようよ。ケンタも冷めちゃうよ?」
「…名前がミニスカサンタになってくれるまで食べない」
「じゃあ一生何も食べれないね。かわいそうな小平太」
「名前が!ミニスカサンタ着てくれればいいんだ!」

ガバッと顔を上げた小平太の顔は涙目になっていた。
骨折しててもけろっとしてた男が何故コスプレ如きで泣いてんだ。
やっぱりこいつバカだわ。

「ていうかミニスカサンタ衣装なんて持ってないし」
「そういうと思って用意しておいたぞ!」
「…うわー、無駄遣い」
「無駄じゃない。私の元気の源になる!」

キリッとした顔は格好いいが、手に持っているのがミニスカサンタ衣装なせいで何とも残念だ。

「…いくら払う?」
「え?」
「私のミニスカサンタコスを見るためにいくら払える?」
「有料なのか」

その言葉に深く頷いて見せれば、小平太は腕を組んでうーんと唸る。
その間に私はちゃっちゃと机の上を片付けてケンタとケーキとシャンパンを運び終えた。
それでもまだ悩んでいる小平太の口元に仕方なくケンタを運んでやる。

「小平太、はいあーん」
「あーん。…少し冷めちゃったな」
「小平太がアホな事言ってるからでしょ」
「重大な事だろう。名前のミニスカサンタは見たいが、買うのに結構使っちゃったからなあ…」
「もったいないなあ。ほらちゃんと自分で持って食べて」
「やだ。名前に食べさせてもらう」

お前は子どもか!
なんて思いながらもきちんとケンタを口に運んでやれば小平太が満足そうな顔をするから、私もつい甘やかしてしまう。
甘やかしすぎはいけないとは思ってるんだけどなあ。
…うーん、でもこれで満足してミニスカサンタコスは諦めてくれるといいんだけど。

「めんどくさくてケンタとケーキしか用意してないけど足りる?」
「足りないけど、いっぱいになると動きづらくなるからこれでいい」
「………」

それはつまり、食べ終わったあとに体を動かす予定があるという事だろうか。
いやまあうん、恋人同士なんだしクリスマスなんだからいいんだけど…ミニスカサンタ状態では嫌だな…。
そんな事をぼんやり考えていると小平太があーんと言いながらケンタを催促してくる。

「もう、自分で食べてよね」
「名前から食べさせてもらう方が美味いんだから仕方ないだろう」
「仕方なくありません」

ため息混じりに言ってやるけどもちろん効果はない。
相変わらずあーんと口を開ける小平太に呆れつつ、最後のひとくちを放り込んでやった。

「はいこれでおしま、いっ!?」
「…名前の指、美味いな」

手首をがっしり掴まれてちゅうと指先を吸われる。
それだけでぞくぞくと背中に快感が走るのを感じながら、もう片方の手でばしりと小平太の頭を叩いた。

「…まだケーキ食べてない」
「うん、そうだな。…ん?ケーキ、ケーキか…」
「何?」
「名前!生クリームプレイならどうだ!?」
「…くたばれアホ小平太」

とか言いながらその日、ミニスカサンタコスで生クリームプレイという濃厚な夜を過ごした私はやっぱりちょっと小平太に甘すぎると思う。

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