「暑苦しい」
「………」
「むさくるしい」
「………」
「うっとおしい」
「………」
「死んでほしい」
「そっ、そこまで言う事ないだろ!?」

吐いて捨てるように死ねともう一度言えば、団蔵は名前のバカ!ツンデレ!と泣き真似をしながら言う。
誰がツンデレだ、誰が。
フンと鼻を鳴らした俺の気持ちを察したのか、三次郎が爽やかな笑顔で名前が団蔵にデレてるとこ見た事なーいと言い放った。
次いで兵太夫がそれって普通に嫌われてるだけじゃんとバカにしたように言う。
そしたら他のメンバーがああ…と納得した声と同情の目で団蔵を見て、庄左ヱ門が強く生きてね団蔵と笑った。

「ひ、ひでえ!えっ、ていうか名前俺の事嫌いじゃないよな!?」
「…微妙なラインだな」
「嘘だろ!?」
「まあとりあえず離れろよ。話はそれからだ」
「何でだよ!つーか仕方ないだろ!文化祭の出し物二人羽織りなんだから!」

そう、仕方ない。
俺と団蔵が所属する生徒会の伝統的の出し物が二人羽織りだから仕方ない。
…が、男と密着するのを仕方ないで納得出来る筈がない。
しかも団蔵は高校生になってからにょきにょき身長を伸ばし、高一の夏休み明けの今ではクラスの高身長組に入っている。
対する俺は低身長組のお仲間だ。
お陰で二人羽織りで後ろにいる団蔵にすっぽり包まれている情けなさ…くっ、やっぱり団蔵嫌いだわ。

「制裁!」
「ぐあっ!?」
「おっと名字選手容赦ない頭突きで加藤選手の顎を捉えました!」
「えっ、ちょっと普通に解説してる場合なの庄左ヱ門!?」
「今更そんなツッコミいれても仕方ないよ乱太郎」

もぐもぐチョコレートを食べながら言うしんべヱに賛成票を一票投じたい。
庄左ヱ門は何だかんだ言って悪ノリするからな。
本人は否定するだろうけど確実に鉢屋三郎先輩の影響を受けてると思う。

「いっ、いて、い、マジ、ギブ!名前!ギブギブ!」
「うーん、俺も文次郎先輩の影響をどこかしら受けてんのかなあ」
「ギブー!助けてー!誰かタオル投げてー!」
「流石名前…考え事をしながら団蔵にネルソンホールド決めるなんて…」
「冷静に解説してるバヤイじゃないでしょ庄左ヱ門!名前!それ以上は団蔵が危ないから止めてあげて!」
「タオ、ル…!」

乱太郎に助けを求めて手を伸ばした団蔵が呻くように言うと、金吾が慌てて自分の首にかかってたタオルをさっと団蔵に投げつける。
うわ、あれ金吾が朝練で使ったやつだよな…きったねえ。
あんなのをくらってはたまらないのでとりあえずささっと技をといて団蔵から離れる。
その直後にバサッと団蔵の顔へタオルが降り立ち、ぐえっとか言ったが俺は知らん。
何の関係もない。

「さて、しかし困ったな…団蔵のバカが下手過ぎて出し物が成功する気がしない」
「確かになー。名前が後ろになりゃ上手く行きそうだけど体格がなあ…」

虎若の言葉にそうなんだよと答えつつ、金吾のタオルのせいで沈んだ団蔵を見る。

「…いっそ替え玉使うか」
「金額次第では協力を惜しまないぜ?」
「きり丸君には絶対頼みません」

きっぱり断ってやればきり丸はわざとらしく肩を竦めた。

「そりゃ残念。俺、団蔵よりよっぽど上手いと思うんだけど?」
「あいつは基本、力技だからな。あいつより下手な奴はそういないだろ」
「名前が気持ち良いように優しく丁寧にやる自信があるんだけどなー」
「俺もテクニックなら負けない自信あるんだけど。でもサイズの問題はどうにもならねえんだよな」

にやにやしながらきり丸と二人、際どくも取れる会話をするとは組純情代表の金吾が顔を真っ赤にしながら止めろ!と怒り出す。
そこにはにゃー?何で怒ってるのー?などと天然の振りをした喜三太が追撃をすれば金吾は口をパクパクさせて黙り込んだ。

「あれー金吾君ったら何を想像したのかなー?」
「何で顔が赤いのかなー?」
「っ、う、うるさい!」
「きゃーやだわー、金吾のえっちー」
「すけべ!変態!」
「二人ともいい加減にしなよ。金吾をからかうより先に二人羽織りをなんとかしなきゃいけないでしょ」

ため息混じりにお母さん…もとい伊助に言われ、きり丸と二人はーいといいお返事で金吾へのからかいを終了する。
喜三太は続けたそうな顔をしてたが伊助を怒らせると怖いので止めておく方が無難だろう。

「さて、それでどうする?」
「どうするもこうするも…生徒会の出し物だし俺と団蔵で頑張るしかないだろ」

仕切り直した庄左ヱ門に答えれば替え玉は?と割と本気な感じに聞かれた。
いいのか学級委員長自ら不正を促して。

「じゃあ団蔵と体格似てるし、ここは僕が!」
「どう考えても虎若は団蔵と大差ないだろ」
「じゃあ僕やろっかー?」
「喜三太はナメクジもセットでついてくるからパス」
「生物委員手伝ってくれるならいいよ?」
「体格的にアウト」
「実験に付き合ってくれるなら手伝うけど?」
「絶対に嫌だ」
「名前、俺はやっぱり団蔵としっかり練習するべきだと思う」
「真面目か!」

悪ノリしてるアホどもと真剣な顔で俺にアドバイスする金吾を切り捨てれば、庄左ヱ門がにっこり微笑んだ。

「じゃあ僕にする?」
「あのなあ、」
「ちょっと待て!名前と組むのは俺だっつーの!他の奴に譲ってたまるか!!」
「おお団蔵、生きてたのか」
「誰のせいで沈んでたと思ってんだ!ってそれはどうでもいい!とにかく名前は俺と二人羽織りするんだよ!」

がしっと俺の肩を掴んでそう主張する団蔵にやれやれとため息をつく。
まったく、そんな事わざわざ言うまでもなく俺が団蔵以外と組む訳がないってのに。

「バカだなあ、団蔵は。俺はお前以外と二人羽織りするつもりはねえよ」
「名前…!やっぱり名前は俺の事…」
「だってほら、文次郎先輩も文化祭来るって言ってたし、替え玉なんてバレたらぶっ飛ばされるもんな」
「………」
「練習頑張ろうぜ!」
「う、うわああああ!!名前のバカ!上げて落とすなんて最低だあああああ!!!」

泣きながら走り去る団蔵を笑いつつ俺は考える。
神崎先輩と団蔵の二人で二人羽織りやってくんねえかな、なんて。


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