私は後輩という存在が大好きだ。
特に一年生なんかは私が守ってあげなきゃ!なんて気持ちになるし、可愛がりたくて仕方ない。
だって私も今まで沢山の先輩方に助けられ守られ可愛がられてここまでやって来れた。
だから私も同じように後輩にしてあげたい。
そう、思ってるのに…

「ひええ、すす、すみませえん!」

何故か、一年ろ組の下坂部平太に怖がられてるというこの事実。
何で!?私が何をしたっていうの!?
私はただ木陰でちょっと昼寝をしてただけだ。
そこにかくれんぼをしてたらしい平太が走ってきて、私に気付くなり怯えた表情で今のセリフ。
私何もしてないよねー!?

「まあまあ待ちなさい」
「ひいっ!」
「そんな怖がらなくても大丈夫だから。かくれんぼの最中?」
「は、は、はいいいい…!」

だからそんなに怖がらないでよー!
平太がビビりだって話は留三郎から聞いてたけど、話した事もない私にまでビビるだなんて…。
あっ話した事ないからビビってるのか!
という事はしばらく話をすれば恐怖も薄れる筈。
よし、ちょっとお話してみよう。

「一年ろ組の下坂部平太だよね?私はくのいち教室六年の名字名前、よろしくね!」
「は、はいぃぃ!」
「…えーと、そこにいたら見つかっちゃうから、こっち来たら?」
「いいいいいえっ、僕、他の場所に行きますから!」
「でもここに隠れようと思って来たんでしょ?ほら、おいで」
「ひっ、」

そんなに怯えなくてもとって食べたりしないのに。
平太のあんまりな態度に悲しくなりながらそれでも笑顔で平太を引き寄せる。
強引?そんな細かい事を気にしてちゃ引っ込み思案とは仲良くなれないぜ!

「この茂みなら見つからないよー!」
「う、は、はい…」

泣きそうな顔で頷く平太にめげそうになりながら笑顔を浮かべて見せる。
やっぱり何事も笑顔が肝心だよね。
ただでさえ怯えて泣きそうなのに私まで泣きそうな顔してたら余計に不安になるに違いない。

「そういえば平太は用具委員会だよね?」
「はい、そうですう…」
「留三郎はどう?怖くない?」
「け、食満先輩はとっても優しいです…いつも僕たちにお菓子とかくれるし…」

餌付けか!
留三郎め、汚い手を使いやがって…!
うらやましいぞ!バカ!

「…ん?あ、そういえば!」
「ひえっ、すみません!」
「いやいや、別に平太が何かした訳じゃないから!今ね、おいしいお饅頭を持ってたなって思い出して」
「は、はあ…?」
「平太にあげる!」
「えええっ!?そ、そんな、僕はいいですうっ!」

茂みの中から全力で否定する声が聞こえて、やれやれとため息をつきたくなる。
もちろん本当にため息をついたらビビられちゃうからやらないけど。
それにしても手強い…これは今日は一旦引いて、後日留三郎と一緒にお話しをするべきもしれない。

「…えーと、それじゃあ私はもう行くよ。かくれんぼ、見つからないように頑張ってね」
「はい…」
「今度は私も一緒に遊ばせてくれると嬉しいな。それじゃ、またね!」
「ま、また…!」

明らかにほっとした声で言われて苦笑い。
いやいや、あの一見すると喧嘩をすぐに売ってきそうな留三郎に懐いてるんだ、きっとそのうち私にも懐いてくれる筈!
そう信じて駆け出した私には見えている。
平太が私と笑顔で会話してくれる日々が!

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