※現パロ


「あの、竹谷くんと私ってお付き合いしてるのでしょうか?」
「えっ!?な、何で!?」
「いえ、もしかして私の思い込みかと」
「付き合ってるよ!付き合ってます!」

大事な事なので二回言いました!
勢い込みながらそう続ければ名字さんはですよね、と納得した表情を見せてくれてほっとする。
これで付き合ってませんよねとか言われたら俺は死ぬ。
バイト先で出会った名字さんに決死の思いで告白して、笑顔で頷いてくれた時でさえ死ぬと思ったっていうのに…まさかやっぱりなしなんて間違いなく呼吸止まる。

「あの、何でそんな事思ったの?俺何かした?」
「いえ、何もないので」

…何もないので?
えーと、それはつまり「何か」があって欲しいって事…なのか?
何かって、つまり何かだよな。
て、手を繋いだり、きっ、キスをしたり…?
でででででも、名字さんていわゆるお嬢様学校に通っててちょっと世間知らず的なところもあるし、手を繋ぐだけで真っ赤になったりするしそれ以上なんてとてもできる雰囲気じゃない。
そ、そりゃもちろんしたいと思うけど、でもやっぱりそういうのは名字さんの同意なしに出来るものじゃないし!

…でも、だ。
今、名字さんが言ったのはそういう事をして欲しいって事だよな。
一応、手はたまにだけど繋ぐ事あるし、名字さんが求めてる「何か」っていうのは…キス…?
いやいやまさかそんなそりゃもちろん俺はキスしたいに決まってるけどまだ早い気がするというかなんというか!
でででで、でもでも!
名字さんがキスしたいと思ってるなら断る理由なんかない訳で!
ど、どうする!?どうしたらいい!?

「竹谷くん?大丈夫ですか?」
「はっ、はいいい!キスします!?」
「えっ!?」
「えっ!?」

し、しまった!
思わず口に出しちまった!

「…あ、あの、ええっと、今のはその、」
「しても、いいですか…?」
「へえっ!?」
「…したいです。竹谷くんと、キス…」

ゆ、夢かこれは!?
もしくは天国かここは!?

真っ赤になりながら俺をじっと見つめてくる名字さんにどぎまぎしながらごくりと唾を飲み込む。
そんな俺に名字さんはもう一度だめですか?なんて聞いてきて、頭の中がぐちゃぐちゃになりながらなんとかだめじゃないです、なんて掠れた声で答えた。

「ええと、あの、目を閉じればいいですか?」
「う、ウン、ソウシテクダサイ…」

緊張しまくりながら頷いて、名字さんの肩にそっと手を置く。
やべえ、手汗すげえ気がする。
気持ち悪いとか思われてないかな。
ていうか俺、唇かさついてないかな。
名字さんの唇は…や、柔らかそうだなあ…。

「じゃあ、その、すっ、するよ!?」
「ど、どうぞ…」

顔を赤くしながら名字さんがぎゅっと目を閉じて俺の服を小さく掴んだ。
そんな仕草にどきどきしながら俺も意を決して名字さんの顔に自分の顔を近付けていく。
鼻息荒くないかな、口臭くないかな、ていうかめちゃくちゃ震えてるんだけど俺の手。
頭の中をぐるぐるさせながらそれでもゆっくり唇を合わせると、ふにゅっと柔らかい感触がして一瞬で頭が真っ白になって何も考えられなくなる。

「…っ、」

どれぐらいか分からないけど、そんなに長い時間じゃなかったと思う。
真っ白だった頭がようやくはっきりして俺はぱっと体を離して手で顔を覆った。
や、やっべえ、すげえどきどきする。
絶対俺の顔赤くなってるだろこれ…。
…名字さん、情けないとか思ってねえかな?
少しずつ落ち着いてくると今度は名字さんに呆れられたんじゃないかとか頭に浮かんできて、今度はさあっと血の気が引いて青くなる。
ど、どうしよう…。
別れ話とか切り出される最悪の事態に怯えながらそれでも何とか俯いてた視線を少しだけ上げて名字さんを見る。

「あ、」

名字さんとばっちり目が合った。
名字さんは俺とおんなじように顔を赤くして唇を押さえながらこっちを見ている。
か、かわいい…。

「…えっと、」
「キス、」
「え?」
「キスしちゃいました、ね」

ふふ、と恥ずかしそうに、だけどすごく嬉しそうに笑った名字さんに俺はまたも顔を赤くして、勢いよく抱きしめずにはいられないのだった。

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