「伏木蔵くーん!友達計画失敗しちゃったよーう!」

なんてまるで猫型ロボットにすがりつくメガネの男の子のように言えば、伏木蔵くんはでしょうねと頷いた。
でしょうね、って何さ!

「最初にそう言ったじゃないですか」
「言ってたけどさあ…」
「天女と何か話しました?」
「話っていうか、何か自分以外に天女はいらないから消えてくれって言われたね」
「…他には?」
「他?うーん…あっ、見てなさい、天女は私一人だって思い知らせてあげるから!どやっ!ってされたよ!」

肉食系女子ってみんなあんな感じなのかな。
だとしたら私はきっと生き残れないと思う。
という事は私ってもしや一生独身…!?
ひええ、それはイヤだ!

「名前さん、まずいですよ」
「やっぱりそう思う!?私結婚したいっていう願望はあるんだけどどうしよう!」
「え?」
「え?」

きょとんとした顔をされて、首を傾げる。
なんだなんだ、何か伏木蔵くんの反応がおかしいぞ。

「…名前さん」
「うん、何?」
「名前さんのボケにつきあってるバヤイじゃないんです」

ボケ?ボケってどういう事?
ていうか前から気になってたけどバヤイって言うのは何でだろう。
昔は場合をバヤイって言ってたのかなあ。
いやいや、今はそれこそそんな事を言ってるバヤイじゃない。
この間昆奈門さんにも名前ちゃんは思考があっちこっち行き過ぎだよ、なんて言われちゃったし。

「ええと、ごめんね。伏木蔵くんは何の話をしてたの?」
「名前さんの立場の話です」
「立場?」
「天女が名前さんに対して敵対心を持ったと言う事は、今まで以上に先輩方に憎まれるという事ですよ」

真面目な顔で言う伏木蔵くんに言われて考えてみる。
天女の子が私を嫌い!と生徒たちに言う。
生徒たちがそれを聞いてあの女!と怒る。
天女の子が私のために争わないで!と言う。
生徒たちが天女さまもそう言ってるし、学園長先生も殺すなって言ってる、今まで通りほっとこう!という結論になる。
と、いう事は。

「対応は今までと変わらないんじゃないかな?」
「だといいですけど、楽観的になるのはよくありません」
「えー、でもなあ。まさか天女の子だって私を殺そうなんて思ってないだろうし」
「分からないですよ。最悪死んでしまってもいいぐらいには思ってるかも」

ええー、平成を生きる私からしたらありえない発想だよ!
天女の子も私と同じ平成から来てるんだし、そうだと思うけどなあ。

「だとしても天女が名前さんを嫌ってると聞いて先輩方が何もしない訳がありません」
「でも学園長先生が私を殺すなって言ってるんでしょ?」
「先輩方は今、天女の妖術にかかってますから…」
「あんなに睨んでても手出ししてこなかったんだし、大丈夫だって!」
「…名前さんは本当に楽天家ですね…」

む、また呆れられてる気がする。
うーん、でも毎日深刻に自分が殺されるかも!って悩んでたら生きてけないし。
それに私がここに来てからもう少しで三週間。
これまで結局何もなかったし、あとちょっとで帰れると思うとやっぱり大丈夫って気がする。

「何とかなるなる!」
「まあいいです。名前さんがそうなのは仕方ありませんし…名前さんは僕が守ります」
「おおっ、伏木蔵くんかっこいい!」
「うふふ…ありがとうございます。それにしても一年生の僕が上級生と対立するなんて…」
「するなんて?」
「すっごいスリル〜」

うふふ、と怪しく笑う伏木蔵くんを見ながら思う。
最近の子どもって、理解不能で何か怖い。
伏木蔵くんの笑い声を聞きながらそんな事を考えてると、伏木蔵くんは君から見たら最近の子どもじゃないよ、なんて突っ込んでくれる昆奈門さんが恋しくなるのだった。


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