「なるほどねえ。名前ちゃんの話を信じるなら確かに君は今までの天女とは違う」

昆奈門さんがそう言いながらずずず、と水筒から雑炊をすする。
雑炊なんかストローで吸って熱くないのかなあ。
そんな事を考えながらついついじっとその様子を見てしまう。
なんでお茶とかお水とか入れないで雑炊をいれてるんだろう。
忍者の常識なのかな。
だとしたら忍者って不思議だ。

「…食べる?」
「えっいいんですか?」
「あ、食べるんだ?」

ひょいっと水筒を渡されて受け取ると、雑炊が入ってるだけあってけっこう重い。
これ吸えるのかな…。
自分の吸引力を信じつつ気合いをいれてちゅうっと吸ってみるけど、私は吸引力の変わるよくある掃除機の方だったらしい。
全然雑炊が上がってきてくれない。

「む、んん、むむむ、」
「…何かこう、いいね。若い女の子が自分のストローを必死に吸ってる姿って」
「名前さん、昆奈門さんに変な目で見られてますよ。変態警報が発令してます」
「え?昆奈門さんて変態なの?」
「まあ完全に否定は出来ないね。男はみんな変態なものだよ」

うーん、自身満々に言う事なのかな…。
疑問に思うけど昆奈門さんがどや顔をしてるからつっこめない。
変な人だなあ。
私のそんな考えを読んだのか、昆奈門さんは変人扱いは慣れてるよとやっぱりどや顔で言う。
それは慣れちゃだめなんじゃ、と思ったけど黙っておく事にした。
伏木蔵くんの目がつっこんでも無駄ですよと言ってたからだ。

「それにしてもよく普通にすすれますね。何かコツとかあるんですか?」
「慣れだよ、慣れ。ところで食事は普通に食べられるの?」
「食べれますよー。お腹も空くし、透明で人に触れない以外は普通です」
「毎日食堂に行かなきゃならないから大変なんですよね」

伏木蔵くんがちょっと心配そうな顔でそう言ってくれて、そうだねえと苦笑い。
学園長先生が食事の保証までしてくれてありがたいのは確かなんだけど、食堂みたいな人が集まるところに行くと睨まれるしなのに無視されるし、正直すごく疲れる。
食堂のおばちゃんにすら目も合わせてもらえず無言で食事を出された時には泣きそうになった。
だけどタダで住む場所と食べる事の保証がされてるんだからきっとこれぐらいは我慢しなきゃらならないんだ、って自分に言い聞かせてなんとか食堂で食事をしている。

「私がストレスで倒れたら看病してね、伏木蔵くん」
「倒れる時は布団の上でお願いしますね〜」
「外で倒れたら運べないしねえ。不便だよね、君」
「ですね。はあ…早く帰りたい…」

がっくりうなだれて言えば、昆奈門さんからふうんとよく分からない反応をされた。
だけど私には意味が分からない反応も伏木蔵くんには分かったらしい。
名前さんは本当に違うんですよ、なんて言って笑っている。
昆奈門さんもそうだねえ、と曖昧な反応で笑ってとりあえずは信じようなんて頷いた。

「何ですか?」
「いーや、何でもないよ」
「何でもありませーん」

ううん、よく分からない。
よく分からないけど、伏木蔵くんが楽しそうだからまあいい、のかな?


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