忍術学園にやってきてだいたい一週間。
ここでの生活にもようやく慣れてきた。
最初は分からない事だらけで、なのに先生も生徒も私の事を無視で助けてなんかくれないから大変だった。
だけど毎日会いに来てくれる伏木蔵くんがいろいろ教えてくれたおかげでなんとかなったんだと思う。
ほんとありがたいなあ。
そんな事を感じながら今日も遊びにきてくれた伏木蔵くんとごろごろしつつ今日あった出来事をお話しする。

「伏木蔵くん、今日は何の勉強したの?」
「今日は喜車の術を学びました」
「きしゃの術?どういう術なの?」
「禁則事項です」
「え?」
「禁則事項ですから言えません」

口の前に人差し指を当てて言う伏木蔵くんが謝るけど、仕方ないと思う。
確かに一般人に忍術を教えちゃったらまずいもんね。
禁止されてる事をちゃんと守れる伏木蔵くんはえらいなあ。
私が伏木蔵くんぐらいの時はもっとあほだったと思う。
毎日友だちと遊びまわって泥だらけになってたし、勉強なんか全然できなかったし。
授業もまともに聞いてる事なんかほとんどなくって、友だちと手紙交換とかしてたもんなあ。

「…伏木蔵くんはほんとにえらいねえ」
「いきなりどうしたんですか?」
「自分のあほさを思い返してたらそういう結論になったの」
「ああ…」
「ああって何!?えっ私って今でもそんなにあほっぽいの!?」
「うふふ」
「うわあああん!ひどいよ伏木蔵くん!」

そう訴えるけど伏木蔵くんは怪しく笑うだけで答えてなんかくれない。
伏木蔵くんは結構辛辣だ。
しかも私をへこませておいてフォローしてくれる事もあんまりない。
なんでも涙目で落ち込む私が面白いらしい。
ううう、趣味悪いよ伏木蔵くん!

「名前さん、それより名前さんの世界の話を聞かせて下さい」
「あ、うん、そうだねえ…何の話をしようかな」
「乗り物の話がいいです!昨日話してた自動車の他には何があるんですか?」
「乗り物かあ…。あ、飛行機っていう空を飛ぶ乗り物があるよ!」
「空を?凧みたいな乗り物ですか〜?」
「違うよー。すっごく大きい鉄の固まりが何万人も人を乗せて空を飛ぶんだよ!」
「鉄が?非現実的だね。信じられないな」
「ですよねえ。平成の話ってびっくりするような話が多いんですよ」
「うんうん、この時代からしたらそうだよねえ」
「まあ非現実的と言ったら君が透けてる事の方がよほど現実味がないけどね」
「確かに昆奈門さんの言う通りです〜」
「うんうん、こなもんさんの言う…わあああああああっ!?だだだ、誰っ!?いつの間にっ!?」

めちゃくちゃ自然に会話してたけど、いつの間にか知らない包帯ぐるぐる巻きの男の人が伏木蔵くんの隣でお茶をすすっていた。
こ、怖い!
いきなりいたのもそうだけど、見た目が怪しすぎて怖い!

「やあ驚かせてすまないね、天女さま」
「あ、え、ええっと、」
「名前さん、この人は雑渡昆奈門さんです」
「ああ!あなたが前に伏木蔵くんが言ってたこなもんさんですか!」
「伏木蔵くん、私の名前ちゃんと覚えてるんじゃないか。やっぱりいつものはわざとだね」
「うふふ…名前さんは本気で間違えてますけどね」

間違え?なんか違ったのかな…。
伏木蔵くんの名前もなかなか覚えられなかったしなあ、私。
でもなんか変わった名前で覚えにくいんだよね。

「あ、私は名字名前といいます。よろしくお願いしますね、こなもんさん!」
「雑渡昆奈門だよ」
「はい、こなもんさん!」
「…昆奈門」
「こなもんさん?」
「名前さんはちょっとアホでいらっしゃるんです」
「そうみたいだね」
「えっ何それどういう事!?ひどいよ伏木蔵くん!」

いきなり私をバカにしてくる伏木蔵くんに文句を言えば、伏木蔵くんはもちろん、会ったばかりのこなもんさんまで私を呆れた目で見てくる。
えええ、まさか満場一致で私はあほ認定されてるの!?
そんな…ひどい…。

「まあ名前ちゃんが阿呆だっていう話はどうでもいいか」
「そうですね〜」
「うう、二人ともひどい…」

バカにされた方の私はどうでもよくないよ…!
むくれながらごろりと寝転がれば、こなもんさんからはしたないよ名前ちゃん、なんて注意されてしまった。
横座りしてるし伏木蔵くんを膝の上に乗せてるし、見かけによらず母性にあふれてるなあ、こなもんさん。
そんな事を思いながらふああとあくびをもらせば、またはしたないと注意されてしまった。

「今度の天女は今までとは違う感じに変な子だねえ」
「面白いですよねえ」

うふふ、と笑う伏木蔵くんに言いたい。
私はあほでも面白くもない、ただ透明なだけの一般人ですよ、と。


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