玄関から足を踏み出して歩きだしたはいいものの、私ははて?と首をかしげた。
うーん、ここはいったいどこかしら?
確かに我が家から出てきた筈なのに辺りの風景はまるで見た事のない場所だった。

「…どうしよう」

ううん、と唸りながらとりあえずうろうろ。
さっきからずいぶん歩いてるけど、右手の堀と左手の建物が途切れてくれない。
それに人も見当たらないし…。
それにしてもここの建物、なんだか古めかしい見た目をしてるなあ。
なんか映画村みたいな、そんな感じ。
まさか私の家のドアがどこでもドアになったんだろうか。
だとしたら私はいまごろ目的地だった映画館に到着してるはずなんだけど。

そんなどうしようもない妄想をしながらとにかく歩き続けるうち、私の背後でガサガサという音がしている事に気がついた。
だけどなんだろうと思って振り返っても何もない。
人どころか犬や猫の姿も見当たらない。
なのにまた歩きだすと後ろでガサガサという音がする。
みなさん、これはちょっとした恐怖ですよ。

「…ま、まさか幽霊!?」

はっとしてそう叫んでからばっと振り返るけど、やっぱりそこには何もいない。
ま、マジで幽霊!?

「い、命だけはご勘弁を!私のたましい食べても美味しくないですよ!遊び相手にしても面白くないですよ!」

ひええ、と狼狽えながら必死で幽霊に向かって主張すると、近くの茂みがガサガサ鳴ってそこからうーん?と不思議そうな声が聞こえてくる。
声まで出してきた!
何で急に私のシックスセンスが火を噴いてるの!?
いやああああ!と叫びながら幽霊から逃走しようとするけど、それは残念ながら叶わなかった。
私は運動神経?何それおいしいの?というタイプなので、慌てたせいで転んでしまったのだ。

「ううっ痛い!」
「…お姉さん、大丈夫ですか〜?」
「だ、大丈夫です…」
「立てます?」
「大丈夫です…」

声をかけてくれた親切な男の子らしき声に返事をしてゆっくり起き上がる。
そうして視界に入ったそこには、なんだか顔色の悪い男の子が立っていた。
この子も幽霊を見たからこんな顔色に?
だとしたら怖かっただろうに私に声をかけてくれるなんて…すごくいい子だなあ。

「君は大丈夫?」
「…? 何がですか?」
「幽霊だよ!今そこの茂みにいた幽霊!怖かったよね!」
「………」
「どうしたの?」
「そこの茂みにいたのは僕です」
「え?」
「僕です」

う、うわあああああああ!?
思いっきり幽霊だと思い込んで色々と喋っていた自分を思い出し、叫び出しそうになる。
実際は声にもならなくてただ顔を赤くして黙り込んだだけだったけど。

「驚かせてしまってごめんなさい」
「ううん、君が悪いんじゃないから…」
「あともうひとつ驚かせていいですか?」
「え?」
「お姉さん、体が透けてますけど幽霊じゃないんですか?」
「…え?」

男の子に言われて自分の体を見れば確かに私は半透明になっていた。

…え?


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