非力なあたしに出来る事



見つけた見つけた見つけた見つけた

見つけたの
あたしが貴方にしてあげられる事…





キッチンでティーカップに紅茶そそぐ

いつもより遅くなっちゃったけどスクアーロ、一緒に飲んでくれるかな?

ふと視線を感じて辺りを見渡せばキッチンの入り口で此方をジッと見るスクアーロが居た


「紅茶、遅くなってごめんねっ」

「チッ…待ちくたびれたぞぉ」
「ふふっ、ごめんって」


スクアーロの表情が何となく固い気がして気になったけど…聞きはしない

あたしは幹部じゃないからスクアーロと上手に距離を取らなきゃ
踏み込み過ぎちゃダメ


「う"ぉい」
「ん?何?」
「…何、してたんだぁ?」

「あ、ちょっと面白い本をメイドさんに借りたらつい遅くなっちゃって」


笑いながらそう言うとさっきまでの固かったスクアーロの表情が柔らかくなってフッと笑みを浮かべた

そう、それ
それを見ると安心するの
頑張ろうって思えるの

テーブルの真ん中にお菓子が入ったバスケットを置いて紅茶片手にお話

大体はスクアーロが1日あった事を聞かせてくれる

談話室でベルとマーモンが騒いでたから怒鳴ってやったらまた散々な事を言われたとか
ヴァリアーの様子を見に来た門外顧問がうざかったとか

あたしはそれを黙って頷きながら聞いて、ただそれが楽しくて

それでもスクアーロが『お前はどうなんだ』って聞いてくるから

庭のお花が咲いていたとか
書類の整理をしてたら昔のボスの可愛い書き間違えを見つけたとか

忙しいスクアーロが普段気づきそうもない事を話してあげて…


「はっ、あのボスが書き間違えかぁ」

「カッ消されちゃうから内容は言わないけどね」

「まぁボスさんも人の子ってこったなぁ」


吹き出しそうになるのを我慢しているスクアーロを見るとなんだかあたしまで可笑しくなってきちゃう


「ぷっ、そうだね」
「う"ぉぉい、今笑っただろぉ?」

「わっ、笑ってないよっ」
「ボスにバレても知らねぇぞぉ」

「そんな事言わないでよっ!本当にバレちゃいそうで怖いじゃん」


悪びれもなく笑うスクアーロの笑顔にキュンってしながらもやっぱりあたしはボスみたいにスクアーロを満たしてあげられないんだって寂しくなった


「スクアーロ?」
「あ"?」
「紅茶、一緒に飲んでくれてありがとね」

「何だぁ突然?」
「また、一緒に飲んでね」






だからあたしは戦うスクアーロの大切なモノを全部取り返す


これはあたしにしか出来ない事なの

ねぇそうでしょ?









ボス…





......

(アイツ…何なんだぁ?)




今度お茶する時はあたしの話を沢山聞いて?


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