時を刻む針は進むのです



アルはどうしたんでしょうか



お兄様が任務とかいうやつで居ない時はお兄様のお部屋で大人しくしているのがお約束

アルが寂しくないようにって買ってくれたお人形さんやご本


綺麗とは言えないけどシンプルだったお兄様のお部屋はいつの間にか可愛いモノが増えていた


「…アルはいったいどうしたんでしょうか」


ずっと持っていた疑問
でもずっと怖くて目を逸らしていた疑問



アルは…

私はあの頃から殆ど変わらない


背はちょこっとだけ伸びたけど8年の年月が過ぎた割には殆ど伸びていないのと同じだし

髪は伸びたけど


何より、ずっと変わらない




ずっとずっと…
ここに来る前の事をよく思い出せない


お兄様が家を潰した時が記憶の最後

次、気づいた時には私はいつの間にかヴァリアーの玄関に居て


直感でお兄様が居るって分かったからここの門を叩いた


楽しい事があればお兄様と一緒に居る時はそんなの忘れちゃうけど
1人に なると思い知らされます



私は…どうしたんでしょうか



お兄様が笑う度
お兄様が優しくしてくれる度
覚えのない左胸の上の大きな傷がズキズキと痛む

耐えられない程の痛みではないけれど脈打つかのように
その存在を示すかのように走る痛み


前にルッス姐に浴衣を着せてもらった時は襟口が大きめのキャミソールを着て隠した

『これは着たままでいいかしら?』
って聞かれたから

『恥ずかしいから』
って言って逃げた



その内自分の事もお兄様の事も忘れてしまうんじゃないかと思ってしまう



それに最近は何だか体が重くて、よく眠くなります


アル、何か可笑しくなっちゃったのかな?


でも兄様に言ったら心配かけちゃうしきっとお仕事休んじゃうから…



うん、大丈夫っ
多分疲れてるだけ



そうしておこうっ!






......

(兄様早く帰って来ないかなぁっ)




ゆっくりと時間をかけて、零に向けて



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