最期の花火



「う"ぉぉい、土産だぁ!!」


夜、談話室で寛いでいるとスクアーロがいつもの馬鹿デカイ声で扉を勢いよく開けた

その瞬間に投ナイフ

俺が脳天を狙って投げたナイフはスクアーロの身のこなしでそこから外れカツっと音を立てて扉に刺さった

ちっ…また殺りのがした


「う"ぉぉい!何すんだベルぅ!!」

「うっせーよ、アルが起きたらマジでお前殺すぜ?」


腕の中で馬鹿デカイ声に耳をピクリと動かせながらもすやすやと眠るアルの髪を撫でながら言えば流石のスクアーロも声を小さくした

ったく、いつもそれならいいのによ


「でスクアーロ、お土産って何なのぉ?」


奥で紅茶を飲んでいた筈のオカマがいつの間にかカス鮫の傍に来てクネクネ問いかける
興味なさそうな顔のレヴィも何だかんだいって気になるらしくて横目でこっちを見ていた


「う"ぉ、が…餓鬼が喜ぶと思ってよぉ」


そう言いながら頭をポリポリと掻くと手にあったも袋を突き出してきた

ジャッポーネの夏の風物詩、スイカに風鈴に浴衣に花火
ご丁寧に蚊取り線香まである

流石好きなだけあんな
まぁ確かにアルは喜ぶだろうけど


「アル?」
「んっ…に、さまぁ?」
「起こしちまってわりぃな」


小さな体を揺すってやるとアルは眠たそうに目を擦りながら首を左右に振った


「ジャッポーネの花火…、やるか?」

「んっ、うぅっ…ジャッ、ポーネ?」

「そっ」
「……やる!」


うわっ、眠そうだったのに一気に元気になったし
流石子供元気だな

まぁアルも好きだもんなジャッポーネ


「んで?女モンの浴衣ってどうやって着せんだよ?」

「あらー、それなら私にお任せよんっ」

「オカマなんかにアル任せらんねぇし」

「酷いわね!何もしないわよ!!」

「兄様っ!平気よ、ルッス姐はそんな事しないものっ」

「そうよそうよ!アルちゃんの言う通りよっ!」

「それに何かあってもアルは強いから大丈夫よ」

「んじゃ変な事されたらそのオカマブッ倒して逃げて来いよ?」

「うん!」


アルは一度ニコっッと笑ってみせてからオカマの手を引いて談話室を出て行った






......



庭に続くデカイ硝子の扉を開け放ち蚊取り線香をつけた
スイカは氷水でしっかりしてからスクアーロが自慢の剣捌きで切って見せた

というか見せつけられた
俺だってナイフとワイヤー使えばそれ位出来るっての

隊服よりも風通しのいい浴衣に着替えたのにまだ汗が溢れ出そうになる


「あっち」

「日本のジメジメよりはマシだよ」

「カス、さっさと仰げ」

「なっ!なんで俺がんな事しなきゃなんだぁ!!」

「あー、うっせーうっせー。つうかオカマ遅くね?いつまで王子を待たせる気だよ」

「ぬ…、来たようだな」


広間の扉が開いてオカマがクネクネしながら入ってくる

ったく、やっとかよ
王子待ちくたびれたし


「お待たせぇー」
「おせーよオカマ」

「アルちゃんが可愛くてつい張り切っちゃったわん」

「兄様っ!」


オカマに続いて入って来たアルは黒地で蝶や花が描かれて所々に白いフリルのついたら浴衣を身に纏っていた

長くてフワフワした髪も綺麗に結い上げられている

…オカマにしては上出来だな


「ねっ、どうどう?」

「ししっ、可愛いじゃん」


シャレになんねぇ位可愛い

手を出したい気持ちをグッと抑えて用意していた手持ち花火を渡してやるとアルは嬉しそうに笑って受け取った

火を付けてやり少しするとアルの手の先の花火がパチパチと音を立てて様々な色で燃え上がる


『キレー』って言いながら笑う姿を見て柄にもなく『お前のが綺麗』なんて臭いセリフを言いそうになった

んな事言ったらクソ餓鬼とかカス鮫とかオカマに何言われっか分かんねぇし

そんな俺の気も知らないでアル打ち上げ花火を上げると騒いでいるスクアーロの所に駆けて行ってしまった


「おいっ、アルっ、危ねぇから王子んトコ来い」

「大丈夫だよっ」

「ダーメ、いいから来い」


火傷なんかされたら王子スクアーロに何すっか分かんねぇからな

戻って来たアルを膝に乗せてスクアーロによって打ち上げられた花火を二人で見上げた

上がった花火を見て無邪気に笑いながら手を伸ばすアル

後ろからその小さな体を抱きしめてやったら幸せそうな笑顔が返ってきて何だか無償に胸が暖かくなった






『また一緒に花火しようね!』って小指を立てて言うアルに俺も同じように小指を立てて指切りをした





知ってっかアル?



嘘ついたら針千本飲まなきゃいけないだぜ?





......

(どかーん!)

(しししっ、どかーん)

(あら、あれってベルちゃんが争奪戦の時に言ってた…)

(まぁ兄妹だから…似てて当然だよ)

(ぬっ…ならアルもベルの様に血を見たらキレるのか?)

(う"ぉ…んなアル見たくねぇぞぉ)



なぁ、また一緒に花火すんじゃねぇの?



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