は?シスコンじゃねぇし



「ほれ、いちごミルク」
「うんっ、ありがと兄様」

広い食堂の長テーブルにアルを座らせて大好きないちごミルクを出してやる
隣に座ったら嬉しそうな笑みを浮かべて礼を言われた

うん、やっぱ可愛い
流石王子の妹

昔よりも少し伸びた背
ふわふわした金髪も長くなった
でも人懐っこい笑顔と綺麗なエメラルドの瞳、白く柔らかな肌は変わらない
ついでに人見知りすんのも変わらない

俺が呼ばれて行った時誰も居なく気配すら感じなかったのはアルがオカマに脅えて隠れていたからだろう

まさか気配を消して俺達を欺ける程に成長してたとは思わなかったけど

ってか、んな事より


「アルさ、何で生きてんの?」
「ふぇ?」

「ゴキブリぶっ殺した時探したのに見当たらなかったから」


てっきり狂った俺が間違えて殺したんだと思ってた

そんな話をしていたら俺の妹が来たという噂が一気に広まったらしく幹部達が食堂へ勢揃いしてた

流石にボスは居ねぇみたいだけど

脅えたように震えるアルの手を掴んでやったら大きな瞳が俺を見つめて思い出したように口を開いた


「ゴキブリっでジ「あー、いい、名前は言わなくていい。んな汚い名前言っちゃダメ」

「ゴキブリでいいの?」
「そっ」

「ゴキブリのがよっぽど汚ねぇぞぉ」

「うっせカス鮫」
「カス?」
「そっ、カス」

「ゔぉぉい、変な教え方すんなぁ!」
「うるせぇよっ!アルが脅えんじゃん!」


『見事な溺愛ぶり』
とでも言いたそうな顔で見られたけど気にしない
だって俺王子だもん
周りなんか気にするつもりサラサラねぇしな

俺とスクアーロがもめてるのをキョトンとしたような顔をして見ていたアルは話続けていいのか分からなかったらしく遠慮がちに声をあげた

「兄様がゴキブリさん殺した時ね…」

「『さん』を付けたからって綺麗になるとは思えないよ」
「マーモンもうっせぇ」


アルが話してんだから邪魔すんなっての!


「アルも兄様に殺されちゃうのかなって怖くて」


隠れてたの


そう言ったアルの声はあの時を思い出したからなのか少し震えていた


「俺がアルを殺す訳ねぇじゃん」
「ホント?」

「ホント、俺アルを愛しちゃってんの」


キョトンとするアル
きっと分かってねぇんだろうな
俺がアルに兄妹愛以上の感情を持ってるなんて
俺の初恋はアル
今だってアルを一番愛してる

俺のブスで馬鹿な愛人達なんかアルと比べたら月とスッポン
いや、スッポンじゃ良すぎるか?
月と生ゴミ位?
まぁ兎に角一番愛してる

アルはまだ餓鬼だけど、そのうち大人になって立派なレディーになって他の男の元に行くんだろう
愛する男の元に

その時、俺がちゃんと見送ってやれるかどうかは分からないけれど今は
まだアルが餓鬼な今だけは


アルにとっては俺が一番だって、思っていたい


グラスに入ったいちごミルクをストローでチューと吸うアルの頭にポンと手を置いて撫でてやったらアルはヘラって笑って見せて


「兄様っ、アル、幸せ!」



だって
ホント能天気な奴




......

(カスに金にがめつい餓鬼、オカマ、変態な)

(?変わった名前の人達だね?)

(゙うぉぉい!ちゃんと教えろぉ!!)




今は俺の気持ちは内緒



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