お揃いなんて嬉しくない




夢を見た



ドクドク脈打つ体を駆け巡る快感

切り刻むと溢れ出す紅

動かなくなったゴミの山

隠れていた小さな体を見つけた時の興奮


全てがリアル過ぎる位鮮やか



最後に切り刻んだのは紛れもない

愛してやまないアルだった






「っ、アル!」


反射的に跳ね起きて名前を呼ぶ
と、それと同時に隣にあった小さな塊がピクンと動いた


「ん…お兄、様?」


眠そうに瞳をこするアル
小さな体をギュッと抱きしめれば不思議そうな視線を向けられたけど
安心する


アルはここに居る
ここに居る


自分にそう言い聞かせるしか術がなかった


「どうしたの?」
「…俺がアルを殺す夢見た」

「あ…」
「アル?」
「お兄様も?」
「は?」




「じゃあお揃いね!」




『アルもお兄様に殺された夢見たの』

お揃いが嬉しいらしいアルはニコニコ笑いながら言ってみせる

なぁ、可笑しいだろ
二人してこんな夢
何笑ってんだよ
何で笑えんだよ


「お揃いの夢見るの…「笑うな!」


俺の声にビクンと震えて止まるアルの声
伺うような表情で見つめてくる


「お、兄様?」
「…ワリー、お願いだから笑うなよ」
「ん…ごめんなさい」

「絶対俺の前から居なくなるな」
「え?」
「ずっと隣に居ろ」

「…」
「居ろよ?」
「…」


何で返事しねぇ訳?
いつもみたいに素直に頷けよ
なぁ、お願いだからさ


「…ごめんなさい」
「んな言葉聞きたくねぇし」
「でも、アルは…」
「聞きたくねぇ」



見せつけられたらから
知ってっから



アルが死んでる事位
俺が殺した事位



「…もういいじゃん」
「え?」

「分かってっから、もうそれに触れるなっての」

「ん…」



小さな体を抱きしめていると自然と目の奥が熱くなる



きっともうタイムリミット何だろ?

一緒に居るなんて無理なんだろ?


全部分かった
分かったから今だけは目を逸らしてもいいよな?







......

(お兄様、泣いてるの?)

(王子が泣く訳ねぇじゃん)





声が震えちゃ強がりも無意味か

← | →







- ナノ -