自覚



病気は自分が気が付くとその後は凄く展開が早い

怠いと思ったら
咳が出て、鼻水が出て、熱が出る

『気づいた時にはもう手遅れ』
なんて事も多々


だから、
だからきっとアルも…






「アルー?」
「お兄様?」
「オカマからケーキ貰って来たぜ?」

「ルッス姐が作ったの?」
「らしいぜ」


綺麗に飾られたケーキが乗ったお皿がお兄様の手によってテーブルに置かれる

ルッス姐のケーキ大好きっ
可愛いし甘いし
それに何だか温かい味がする

愛情ってやつなのかな?


「いただきますっ」


お兄様からフォークを受け取ってケーキを一口…



カランッ …



「あ…」
「アル?」


フォークが…滑り落ちた
もう、力も上手く入らないみたい

「ちょっと待ってろ、今洗ってきてやっから」
「ん、ありがとお兄様」


ニッて笑って離れていく背中
きっと…お兄様もアルの変化に気づいてる

ごまかせないよ?
今、一瞬口元引きつってた


アルが自分の体がやっぱり変だって実感したのは一週間前



日に日に重たくなる体

失ったままの記憶

ここに居るのに何度もアルを探すお兄様


そして消えはじめたアルの…




「アル!!」


お兄様?
何で泣いて…


「あ…、」
「なんだよっ、どうしたんだよ」





消え始めた…





私の、体。







「…大丈夫、だよ?」
「何処が大丈夫なんだよ!お前、手っ…手、透けてんじゃんっ」


お兄様の手から落ちたフォーク
震える体を必死に隠そうとするお兄様が妙に子供に見えて可笑しい


「大丈夫、お兄様、ケーキはもういいから。アル、疲れちゃった」

「…寝る、か?」
「ん、お兄様も一緒に寝よ?」
「あぁ…」


お兄様の腕に抱かれたまま連れて行かれてベッドに二人でゴロンと横になる


ギュッと抱きしめてくれるお兄様の背中に腕を回して胸に顔を寄せると自然と眠気が襲ってきた


温かい温もりと香りに包まれて促されるままに瞼を閉じる









そして私は夢を見ました









お兄様に左胸の上を斬りつけられて死んだ最期の私の夢を







.......

(あぁ、そっかやっぱりアルは…)




もうそろそろ…時間です

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