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第4話vampire

練習試合があった夜は気になって仕方なくて眠ろうとしても、宍戸君の漆黒の瞳を思い出すばかりであまり眠れなかった。

次の日、私はなんとなく不安を感じながら学校へ行った
幸い私は宍戸君と同じクラスじゃ無いから気まずくならなくてすむけど、いつ顔を合わせるかわからない

まぁ
話した事なんて無かったけど…

自分の席に向かいながら友達と挨拶をかわした時、ふと視線を感じて、視界に入ってきた跡部さんと目があった

すぐにそらされたけれど、普通にあり得ない事だ。
氷帝の帝王とまでうたわれる彼と目が合うなんて跡部さんファンならきっと顔を赤くして喜ぶだろう

でも、私はそれとは全く違うことがひっかかった。

「目、あんな色だったかな…」
噂によるとハーフである跡部さんの目は綺麗に透き通ったスカイブルーだ
でも今日は藍色みたいな、深みがかった色に見えた
普通は気にならないし、誰も気づかない程度の変化だろう

でも、あの日のことから僅かに目の色に敏感になっている自分がいる

「…気にしないでおこ」

教室の扉が開いたとき、僅かに甘い香りがした
今までも同じクラスだったが気にする程では無かった
人によって血の匂いも様々だ
下級吸血鬼なら嗅ぎ分けられないであろう…少しばかり特徴のある血の香り

たしかに、他よりは少し甘い香りしてやがんな
宍戸の為にもさっさと調べてやるか

  3−A:名字名前


その日私は、宍戸君に会わなかった

更に2日後

あの日から特に変わった事は無くて、私はもう気にしないようにしていた

「ちょっと?名前聞いてる?」

今日はお昼を教室で食べずに、友達や他のクラスの女の子達と中庭でお昼休みを過ごしている

「あ、ゴメン考え事してた。っで、なあに?」
「だから、今日何か宍戸がテンション低くてさ。」
「そうそう、朝から一言も喋んないよね」
みんながクスクス笑う
けどその名前を聞くとやっぱり脳裏にはあのことがフラッシュバックする
「あははっ、ちょっと不気味なわけよー噂。によると、跡部様もそうなんでしょ?」

…そういえば
今日は朝から話しかけんな的なオーラが漂っていたし、眉間にしわがよりっ放しで周りに女子が集まっていなかった。

「うん、喧嘩…かな?いや、でもあんまりそういう事無さそうだし…機嫌悪いって言うか、体調が悪かったんじゃない?」
「まっ、そんなもんか。あっ昼休み終わっちゃう!私、宿題忘れてたんだった
みんなごめん!じゃあね!」

そう言って友達は走っていった。
私達はゆっくりしてから教室に戻る

午後の授業は窓から空をみて惚けていた
天気いいなぁ
今日星綺麗だろうなぁ、おまけに満月らしいし

ゆったりとした雲の流れが気持ちいい
思わず眠りたくなってくる

ガバッ
っといきなり背中に誰かの体重が寄りかかってきた

「おわっ、」
「名前!帰ろう」
「あっ、うん、帰ろ帰ろ」

眠いのを我慢してるうちに、授業がいつの間にか終わっていた

その日の帰りは、私と友達でドラマなんかの話をしながら、楽しく帰った

友達と別れを告げそう遠くないうちの玄関に急いだ

「ただいま」
「おかえり名前、お風呂湧いてるわよ」
「はぁい」

うちは単身赴任のお父さんと専業主婦のお母さん、私の三人暮らしの一軒家だ

家に帰ると一度部屋に行って、荷物を置いて部屋着に着替えた
勉強の難しい氷帝に入ってからは、学校から帰ってすぐに風呂次に宿題がいつもの日課になっていた
そうでもしないと置いて行かれる

お風呂をすませいつも通り宿題に取りかかろうとした

が、

あれ?課題の原稿用紙がない…
何処に置いたっけ?
確かここらへんの筈…

「あぁっ!学校…だ」
「お母さん、私学校いってくるっ!」

そういいながらまた、制服に腕をとおす

「あら、こんな時間に?」
「まだ7時だし大丈夫だって!じゃあ」

7時なら高等部の部活が終わるころだ、走ればまだ…
走っているときに時折空を見上げると明るい満月が出ていた
やっぱり今日は雲が無くて綺麗だ
でも、今日はなんだか不気味にも見える

「っはぁ…ついたあ」

夜の学園はとても静かで不気味な雰囲気を醸し出している
私みたいに家が近い人じゃなければわざわざここまで課題を取りにこないだろう
思わず引き返したくなるけど、ココまで走って来たのを無駄にはしたくない

「高等部部活終わってるじゃん…教室いこ…」

少々、いや、凄く怖がりながら私はやっとの思いで教室までたどり着いて、扉を開けた

「どこだっけ、原稿用紙三枚分とか多すぎるよ…あ!あった。」

よかったぁ。と安堵のため息をつきながら、私は教室から足早に出た
とにかく早く帰りたい

そう思ったとき物音が聞こえた気がした

カタン

!?

次のははっきり廊下に響いた
どうやら一番奥の空き教室で、何かが動いているようだ

っ、何?

冷や汗を掻きつつ恐怖で動かない足を無理やり前へ踏み出す
ゆっくりその教室に近づいていった

(何にもないに決まってる、何もなかったらすぐ帰ろう)

ガタガタッ

しかし近づくにつれ、物音が大きくなっていく

「…ぁ」

かすかに人の声もした
誰かいる、お、お化け…とか?

全身に冷水を被ったような痺れが走る
更に聞こえてきたのは、女の人の喘ぎ声と
…物を吸い上げる音

ジュル…ジュッジュル…

「…っあ…んぁあ!」
いっそう高い声が上がったかと思うとそこには沈黙が訪れた

私は意を決してドアの隙間から中を覗いた
隙間から漏れてくる鉄の匂いに鼻をつんとつかれながら、視界に入ってきた光景に私は言葉を失った




「うそ…吸血、鬼?」



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修正11/3/30

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