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第二話 甘美


今日8時半から行われた他校との練習試合
相手校はそう遠くないとこのテニス部だ


相手には悪いが勝つ以外の結果は無かったってわけで、
当然なのか1ゲームも落とさずに6-0
つーか、相手弱すぎ
…激ダサ。


氷帝で試合があったからか、練習試合なのに何故か観客が多い
他校でやるときは部員以外の応援がちらほらいるくらいだ
といってもただの練習試合を他校まで見に行くってのもこの学校の面白い所だと思う。
選手の立場からすればそれは嬉しい事だし…


始まってから終わるまでの声援が凄かった…とくに一般生徒

あんなに高い声で、しかも大きい声出して疲れねぇのか?



自分たちのラケットなどを持って出口に行くと女子生徒が待っているのもいつもと同じ
学校生活の中では話もしない女子となぜか握手する時もある




……にしても毎回すげぇな。
「宍戸さん、もうみんな荷物持って出て行ってますよ?」

後ろからした声に振り返ると、長太郎が自分と俺のラケット2本を持ってたっていた。

「ありがとな、長太郎。」

ラケットを受け取って俺達も出口に向かった。

「今回もすげぇな。」

俺が目で指したのは小さな人だかりが出来ているコートの出口
「あぁ、あのことですか…
去年より凄くなってません??」
先輩達が卒業して、今年のメンバーになってから
あぁ言うのが突発的に増えた気がする

「……。」

いや、確かに増加してる
忍足なんかは笑顔で女子に言葉を返しているが、俺はもうちょい控えめにしてた方が良いと思う
あいつあんな事して優しそうにしてっけど、ドSだし

跡部なんかは、すげぇ眉間にしわ寄ってる
さすがにここまでされると跡部も不機嫌さ全開だ
さっきからアイツの周りに人があんまり近寄ってないのもそのせいだろう

群がってくる女子に少々苛立ちながら、部室を目指した

が、俺は意外な事に足止めを喰らった


1日通して肌寒い天気だったが、その時かなり強い風が吹いたジャージがバタバタとはためく
その時届いた強烈な香りに
体の全ての機能が停止した

何かの勘違いかもしれないが探さずには居られなかった。

間違いない
風とともにその香りを流したそいつは俺が感じた事が無いくらいの血の持ち主だと気づいてしまった

渇望で黒く染まる瞳と深く冴え渡る視界
離れた所に居る女子生徒を見つけ出す

無意識に首に行ってしまう視点をやっとの思いでそらすと目があった
酷く戸惑ったような顔をしている知らない女


ヤバイな
どうにかしねぇと

どんどん頭から余裕と言うものが無くなっていくのが自分でも分かる
理性を必死で保とうと頑張るが俺の意も虚しくさらに頭の中は漆黒に染まっていく

「いきなりどうしたんですか!」

どこか遠くで長太郎の恐怖の混じる声が聞こえてくる

体が動かない
その女も凍り付いているように動かなかった
目の奥で火のように何かがチラチラ燃え始めるとともにガラガラ音をたてて崩れていく理性

隠されていた本能が脈を打ち始める

どうすればうまく誘き出せる?
どうすれば短時間で二人きりになれる?
どうすれば、アイツの血を飲める…?

そうだ今すぐにでも目を見て笑ってやって、ちょっと話があるとか言えば言い
今までと同じ方法で…

…っ欲しい




トンッ


「いって」

刹那に肩に鋭い痛みが走った
正気に戻さる

「宍戸、今日ちょっと俺の家にこい」

「…跡部」

他の奴らの背を追って部室に向かう
肩にはまだ痛みが残ったままだった


ここまでしねぇといけねぇくらい、だったのか?

何で俺だけ…?
こんな我慢苦手な奴だったか俺って?


‥正直やばかった

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修正11/3/30

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