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玄関を出ると門の前にはすでに友達が立っていた

「あ、友達!」
「おはよ名前、ほらはやく行くよ!」

名前が門に手をかけた時点で友達はもうあるき出している



「ま、待って!」

「名前が歩き出すの遅いからでしょ?」

「えっ、っていうか何で友達うちの前に居たの?」



私は先々行ってしまう友達の横にやっとの思いで並んだ。
そして疑問を口にして見ると、友達は驚き顔だ。



……と言うか、呆れ顔

「はあぁ!?」


友達が何言ってんのとでも言いたげにの私を見下ろす(友達は背が高くてスタイルが良い)

「名前!あんた言ったじゃん!?」

「‥‥‥?ご、ごめん」


私の反応を見て友達はハァ、とため息のプレゼント。


「覚えてないのね、昨日名前の教室で話でもしながら時間潰ししましょって約束したじゃない。」

「……あ、そうだった。よね?」

あははと笑いながら見上げるも、もはや私を冷めた目で見る友達。

「よね?じゃない。」
「‥‥‥‥なんか悲しいな。」


「悲しいのはあたしよっ!これでも喰らえっ」
と鞄から取り出したペットボトルで笑顔で一発。


「う!ちょっと、何もいきなり」

突然の後頭部の打撃に目に涙を浮かべて友達を見ると
友達は笑顔でまた一言。


「学校ついたわよ?」

そう言われて今日わざわざ早く起きて来た理由を思い出した。ここで出遅れると悲しくも立って見なくちゃいけなくなる
なんだかんだ言って一人で学校まで歩くのもさびしかったし、一緒に来れて良かった。


友達、今日私ん家の前で怪しく笑ってた事、誰にも言わないでおくよ…

と、今日の朝の事を思い出しながら心の中で唱える

「友達、いつ見ても校門無駄にお金かけてるよね…」

「まぁ、こんだけ人数居る私立だしかなりお金もってるでしょ。テニスコート行くわよ。」

「良い席取れるかな」

「あんた表情に出やすいよね」

「そうかな?あっあそこの席良い!」


私が見付けたのはコートの近くにあるベンチだった。いつも誰かがすわってる席。
さすがにまだ誰もいない


「良いじゃない!テキトーに荷物置いときましょ。寒いから、教室教室」



私達は場所を取った後、教室に向かった。




「良いよねぇ名前は。跡部様と同じクラスで。」

私の机に肘をついて居る友達が突然口を尖らせて、呟いた


「へ?友達のクラスにも、宍戸君がいるじゃん!」

私がそういうと友達はいきなり
ダンッと机に手を突いて身を乗り出してきた


「あんたっ、宍戸派だったの!?」

「宍戸君派って言うか…そこまでこだわりはないからそう聞かれても困るよ〜」

その後も、私達は教室で時間になるまで何組のあの子は誰派だとかワイワイ話していた。

腕の時計を睨んであ!と友達が声を上げた。

「名前 急ご、もう25分だから。」

「後5分!?いこっ」



校舎を出た一時間前とは打って変わってコートの周りは部員と応援に来た生徒で人だかりが出来ていた
思わずひるむ

コートの周りに群がる、生徒達に飲み込まれながらも
やっとの思いでたどり着いたベンチに、二人とも安堵のため息を漏らしながらった

捕られたりしてなくて良かった!!



結局、ココまで来るのにてこずってしまい、もうテニス部はコートに入って来てしまっている
一気に黄色い声があがる

「うわ…」
「やっぱ人気ね、」

友達にうなずきながらまたコートを見る


やはり一番目立つ跡部の口元は綺麗に弧を描いていた
思い切り笑えばやはり年相応のかわいらしさも出るであろうが、名前は彼が教室で思い切り笑う所など見たことが無かった
いつも余裕そうなどこか人と違う笑顔を見せる
でも不思議と生意気さを感じさせないのは実際に彼が持っているカリスマ性からだろう


誰もが目を奪われる個性派R陣は"綺麗だ"
そして


‥‥‥‥とても強い。
大会で残す成績しかり、だ。



「もう少し長く見てたかったなぁ」

結果はストレート勝ちだった。
まぁ、練習試合だし‥‥‥
優勝も何も無いんだけど。


「ほら名前、出待ちしないの?」

「あっ、するする!」

「あたし習い事あるからこれで帰るわね!
名前、あたしの代わりに出待ちしといてね?」

「帰っちゃうんだ、さみしい」

「あっはは、まぁ一人だし遠くからみとけばいいじゃない、じゃね!」

「ばいばーい」



ウチの学校で試合が行われた時は、自然と出待ちをするようになっている。
そこで、お疲れ様です。とかいろいろ声をかけるんだけど……



これじゃ、近寄れない……



すでに前には進めなくなっていて、仕方なくコートから出てくるレギュラー達を見ながら頼まれた分だと小さく"お疲れ様です"と呟いた




その時強い風が吹き付けた
ガサガサガサッ
と頭上の木が忙しく擦れあう



名前の首元に垂らしていた髪の毛が一気に舞いあがったのとスカートを抑えたのはほぼ同時だった

突然の強風に所々で非難の声があがる

風で乱れた髪を手ぐしでなんとかなでつけて、俯いていた顔をまた上に戻した


その時、強い視線に気がついた


その人を見る


(宍戸、君?)
自分が見られているとは思えなかったが、確かに彼と目が合っている気がする

宍戸は名前を睨むに近いほど強く見ていた
動けなくなったかのように瞬きが酷くゆっくり行われる



いつもは明るい筈の彼の瞳は、硬い表情のせいか真っ黒に見える



冷たい……
凍て付く様な何かが瞳の奥で燃えているような絶対零度のその瞳に恐怖を感じた。




でも目をそらせなかった




まるでそらす事を許さないように
心臓を鷲掴みにされたようだった。


動けないまま
首の後ろを冷たい汗が流れていく



絡まった視線を外せないで居ると宍戸の肩をたたく不機嫌そうな跡部が視界に割り込んできた。

跡部が宍戸の耳元で何か囁くと宍戸は我にかえったように名前から視線をずらした。


最後にもう一度名前を見たがその時はすでにいつものさわやかな印象の彼だった
瞳も明るい色に戻っている


「何なの。」


一人意味が分からない私はそう小さく呟いた



家に帰っても、宍戸君のどこかおかしい視線を思い出し、落ち着かなくて思うように眠れなかった。


第二話へ
修正11/3/30

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