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第25話 密告 立海said

太陽は嫌いじゃ

ただの輝く白い玉
それなのに俺はそれさえ瞳に映せない

その光が届かない、暗いところが好きなのは
それが傷つくことを避ける賢い手段だとしったから

途中で失ったなら"それまで"があっただろう?
失う事を知らない無知の弱さと幸せを感じる時があったはずじゃ

でも、最初から何もかも無かったら・・・?
"それまで"さえ無かったら?
お前さんには分からんよ

ただの輝く白い玉
それなのに俺はそれさえ瞳に映せない

映す瞳なんて、生まれる前から失った
抱きしめる腕なんて、授けられることの無かったただの骨

指をすり抜けていくものが赤い流れだけだと言う虚しさを
誰も分からないだろう…

Masaharu.N




「人間の女の子が来るみたいだね?」
ここは病室の個室
俯いていた幸村は長い沈黙を問いかけで破った。憂いの含まれた静かな声。長い睫のしたで、瞳が不思議に揺れている。
「ぷり、」
幸村が何故そんな態度をとるのか理解できず、仁王は面白く無さそうな顔をした。
「それがどーしたんすか?大体、俺と仁王先輩だけで来いってどういう…」
「いや、俺はね…赤也。」
赤也の方に瞳を向けた幸村は静かな顔のまま、二人を交互に見た。
「二人がどうするつもりなのか心配になって。
真田に聞いたんだけど、その子に会ったのは二人だけなんだろ?」
…なんだ、丸井先輩あの女に会ったこと俺ら以外にいってねぇのか。
そーっすけど、と赤也は言葉をにごした。それがどうしたんだ、と言うような感じだ。しかし、仁王は何かを悟ったと表情が変わる。
「仁王…」
「うちの部長様はさすがやの。俺がその女をどーするか心配…なんじゃろ?俺がその女を“どうするんか”が…」
金色の瞳が意地悪く光った。幸村は困ったように微笑む。
「欲しいから、壊したいから…そればかりじゃ、無くすのも壊れるのも自身だと言うことをよく知ってるはずだろう?」
ビリビリと肌に走る刺さるような痛みに眉をひそめる赤也はと立ち上がる仁王
「じゃあの、幸村。」
仁王は牙を舐めていた舌を引っ込めて不適に笑いながら出て行った。
「幸村部長、そろそろやめてくれねぇっすか…?」
「あぁ、ごめんね赤也。」
言うが早いか肌を刺すような痛みは無くなった。赤也も立ち上がって出口を向く。
何にそんなにキレてんだ…?部長は。
「部長…何がそんなに気にかかってるんスか…」
ドアに手をかけた赤也は足元に視線を落として言った。
「部活サボってまで来いって、他に何か言いたい事とか無いんスか?」
赤也の問いに幸村は肩をすくめた。
「いや、ただね…俺も仁王と同じで彼女が嫌いなんだ。」

病室を出て小走りで仁王に追いついた赤也の頭の中では、さっきの幸村の言葉が渦巻いていた。(彼女が嫌いって…どう言う意味だ?)
「のぉ赤也、あんなして止められたら、なおさら止まらんくならんか?」
前を見たままの仁王の瞳は確かに黒が混じっている。赤也は今しか無いだろう…と本能的に思った。
「仁王先輩は、あの女が嫌いなんすか?確か…名前だったっけ?」
それに仁王は可笑しいことを聞いたように声を上げて笑った。
「なんゆーとんじゃ、嫌いやったらこんなに気にかけんぜよ。興味津々じゃ。」
「じゃぁ、どう言う意味すかねぇ…?仁王先輩嫌な女とか居ます?」
イライラした顔をして赤也が呟くと、また仁王はニヤリと笑った。
「いきなりなんじゃ。幸村になんか吹き込まれたんか?」
あっさりと言い当てられて赤也は少しびっくりする。
「俺も仁王と同じで彼女が嫌いなんだ。って部長が言ってたんスよね〜」
瞬間、仁王の目つきが変わった。しかし、それをなかなか表情に出さない為赤也は気づかない。
「幸村がそう言っとったんか?」
「そうすよ。俺にはさっぱり…」
病院の自動ドアを抜けると眩しい光が二人を照りつける。仁王は顔をしかめた。
「ほーう。やっぱりお前さんもか、幸村…」
「?」
「ふぅ…」
赤也と仁王が出て行って、幸村はベッドに背中を預けて天井を見つめた。藍色の髪の毛が真っ白な顔にかかった。瞳に静けさを宿して、上に手を伸ばした。
「………出来れば殺してあげたいよ。」
ぽつりと一人呟く声は、ここには居ない人に囁きかけているような声だった。
「…その位あなたを憎んでるんです、百合菜さん……………」
仁王、君が重要なんだ。


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修正11/4/6


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