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第21話 薔薇輝石

「怖いだろ?」
と、そういった声が頭の中で響いてる。何かを怖がってるように見える。
そんな瞳で、怖い?と。
じゃあ、貴方は何を恐れているのか教えて?
今日の声は塗れているね。


首を後ろに傾けた。
恐る恐る、宍戸君の目を見て・・・急いで瞳を閉じた。赤い瞳は正直に言うと怖い。
綺麗だけど…綺麗過ぎて嘘みたい。血の色だから?
「今日は、何だか違う。宍戸君なのは確かなのに…
今の宍戸君は…」
     吸血鬼
(私とは違いすぎる。)
最後のほうは声がかすれて出なかった。初めてみた"本来"の姿に緊張が取れない。
でも、もう一度顔を見上げる。
私だけに向けられている赤い瞳。艶やかで、宝石みたいに光っている。
まだドクドクとうるさく心臓がなっている。今の彼には全て聞こえてるんだろう。
「今の俺は…?」
私が言いかけた言葉も全て分かってるんだろう。真っ赤な瞳が悲しげに歪んだ。
「化け物?」
「違う!そんな事思ってない!」
あせって答えた私から、そっと腕を離した宍戸君。
安心さえ覚えるその拘束が離れていくのに、きりっと体に痛みが走るような感覚が走った。
「俺、お前を連れてく気はねぇから。」
「え?」
「合宿に・・・。」
そう言いながらボフッとベットに倒れ込んだ宍戸君は今にもまぶたがくっつきそうだった。
「…寝るの?」
「貧血な上に、朝テニスしたし。何か激だりぃ。」
…激だりぃ?
「…うん、分かった。」


いきなり柔らかくなった雰囲気。
ベットに横たわって静かに寝息を立てだした宍戸君を静かに見ている私。居心地のいい空間に温かい静寂が広がっていた。
(でも)
私は一人首をかしげた。
(吸血鬼が貧血なんておかしい話だな)
単に体調が悪いのか、多量な出血か…。
また一人、首を振る。
吸血鬼が出血するなんて聞いたこと無い。
でも体調が悪いのだったらテニスもフラフラしてできないと思うし。
(跡部さんに聞いてみよっかな)
そっとベットに投げ出された掌を持ち上げた。
彼が舐めたおかげで傷跡がほとんど目立たない。
だったら、何で?
うっすらと残る牙の後をじっと見ると先ほどの宍戸君の姿が浮かんで背中がゾクゾクした。
死んだように動かない彼の顔にそっと手を伸ばして、頬に指先で触れてみた。
こんなに無防備でいいんだろうか。
ベットに座って近い距離で顔を見る。とっても変な感覚だった。
今までの誰よりも落ち着く。
友達よりも、家族よりも…
私はあなたんは不釣合いなのに、私をドキドキさせたり落ち着かせたり…
安心して頼れる人
私はゆっくりとベットへ落ちた。


夢の中で温かいものに包まれた。
   とても優しくて
愛おしさが溢れるような腕で
しっかりと抱きしめてもらう夢
私はこの瞬間のために生まれてきたんだろうと…
そう思えるくらい幸せな夢だった。

目が覚めると最後に見たのと同じ、保健室。
ひとつ違うのはベットに綺麗に寝かされている私とそれ以外に誰も居ない保健室。
私の隣のシーツにはまだ微かに熱が残っていた。
夢で見たのと同じ香りに包まれながらもう一度瞳を閉じた。
次に起きたのはそれよりずっと後。
昨日のストレスで起きようとしても体が眠り続けた。

    結果

「放課後・・・」
有り得ない。一日保健室にいるなんて。
まるで寝に来たような感じだ。携帯には体調を心配する友達からのメールが届いていた
。頭を抑えながら教室に行って、鞄を手に取り校門を目指そうとしたとき、大切なことを思い出した。
「わ、私マネージャーっ・・・!?どうしよう!」
時計を見ると部活が始まって20分経っていた。
即座に方向を転換して部室に向き直る。
こんなに遅れてしまっては部室に行きにくい。きっと1年生のみんなも不思議に思ってるだろう
こっそりとテニスコートを覗いてみると案の定みんな練習中だった。
(やっぱり始まってるよね…どうしよう)
そうため息をついた時、いきなり肩に手が乗った。
心臓が止まるんじゃ無いかと思うくらいびっくりして後ろを振り返ると綺麗なアイスブルーの目

「今まで何をしてたんだ、あーん?」
ゆっくり上がる片方の眉。それすらも綺麗だなんて、やっぱり跡部さんは特別何だと感じた。
彼らの中でも跡部さんの存在感と溢れる気品はずば抜けてる。
そんな人を前にして必要以上に言葉が出づらかった。
寝てた何て。

「あの、保健室で…ねっねね…」
「さっさと着替えて来い。」
「えっ…はい!」
いきなり出された命令に、急いで更衣室に走って行った。
「跡部、名前に甘いんだね〜」
「慈郎、練習に戻れ。」
そう言って背を向け歩いて行く跡部に向かって慈郎は声をかけた。
「あっ待って!名前にはいつ言うの?」
「‥‥‥明日だ。」
軽く振り返って言った跡部の顔は妖艶で不適な笑顔だった。



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修正11/4/4



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薔薇輝石*宝石の一種らしいです。ワインレッドのものやオレンジっぽいものピンクっぽいものまで色々あるみあいです(いい加減やなおい 笑

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