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第14話 仲間


  堕ちるんやったら


   勝手に堕ちぃ?


  イくんやったら


  さっさとイきや

Yushi.O


「別になついてねぇよ、そんなんじゃねぇ‥‥」
忍足さんを睨みながら、宍戸君が言った
「そ?せやったらえぇんやけど」
宍戸君から視線を外した忍足さんはもう一度私に視線を戻した
藍色につやめく漆黒の髪
眼鏡の奥からは切長な瞳
何を映しているのか、分からない
まるで氷のような‥‥‥

仁王に近い雰囲気を持って居る人だと思った
「よろしく、お願いします」
見ていられなくて思わず忍足さんから視線を外した
自分でも驚くくらい怖じ気づいてしまっている
いつからこんなに気が小さくなったのかな
冷たい忍足さんの手に捕まれて震えた左手
でも宍戸君がその腕を握っただけで、その震えがとまった
顔を上げて、宍戸君を見て思った
‥‥あぁ、そっか
私、宍戸君と会ってから。
宍戸君がそばに立っていてくれるようになってから、
こんなに臆病になったんだ
宍戸君は私の手から指を離して、歯を見せて少し微笑んだ
「こんくらい大丈夫だろ」
そう言った宍戸君は口元に手を当てて、何やら考えだした
跡部さんが初めて口を開いた
「慣れも必要だぜ?名前」
「・・‥あぁマネージャーやんだから早くこいつらに慣れてもらわねぇとな」
「?」
意味が分からず顔を傾けた私
「お前ら頼むから気をつけろよ」
そう言い残して宍戸君は部室を出た
「ぇ・・・っ、」
ちょっと待って。
“こいつらになれねぇーと”って、全員初対面みたいな状況で宍戸君が居なかったらこの人たちとまともに喋れないよ…
宍戸君が出て行った扉を見つめる私にの視界をさえぎるように、長太郎君がドアに背中を預けて立った

長太郎君まで…
今度こそ眉をハの字に下げた私に、後ろから声がかけられた。
「跡部部長…気をつけろよってどういう意味ですか?」
「あぁ日吉、血を出すなって意味だ」
うわぁ日吉君の声初めて聞いた…
少し感動していると
「なになに!?このこがマネージャーやんの‥‥?」

フワフワの金髪に
たれ目がちな瞳
「えっ、あの‥‥」
私が返事するまもなく、彼はズイッと身をのりだして来た
……この人、普通だ
にこにこ笑っている彼の顔に、先ほどのような緊張感は薄れた
‥‥‥‥のも、つかの間
「!?」
彼、芥川慈郎は名前の首筋に顔をうずめた
びっくりして引き離そうとする名前
「何やってるんですか‥‥ちょ!?」
肩を力一杯おすと、彼は思いのほかいとも簡単にヒョイッと顔をあげた
その瞳はわずかに色が深まっていて、名前は背筋に冷水が流れたような感覚が走った
名前をよそに、慈郎は頬をほころばせた
「良い匂いすんね〜」
その言葉にポカンと口を開いた私をよそに彼はニコリと笑ってまた口を開いた
「俺のBloody roseじゃ無いのにこんな匂いするんだし、
‥‥宍戸、かなりやばいんじゃない?」
‥‥‥bloody rose??
初めて聞いた言葉だ
それに宍戸君?
どうやら私の知らない事はまだまだいっぱいあるみたいだ
長太郎君が前に言ってた
強く惹か
れるような血の香りの持ち主に出会うことがあるって
でも、芥川さんの言葉だと
まるで
まるで私が…

「ジロー!!俺にも見せろって!」
そうやって身を乗り出してきたのは向日岳人さん
腰に両手を当てて、私を覗くように見つめてくる
彼は可愛い、美人と有名だ
ひそかに身構える私を見て、彼は「ふーん」とつぶやいただけだった
どうやらそこまで私に興味を示さなかったらしい向日さん
忍足さん、芥川さんと心臓が持ちそうに無かった私は警戒心を解いていた
そのおかげで
こんなことになるなんて…
???
指先に湿った感覚が走ったのと同時に、指先に鋭い痛みが走った
「いっ!!
……む、かひさっん
なにっ…」
上目遣いで私の顔をうかがいながら指から滴る血を舐める向日さん
指先から感じる感覚に、異常なほど頬が上気した
「あっ、向日さん!」
「向日先輩、話聞いてなかったみたいですね」
二年の2人に何だ?と首を傾げる岳人に跡部がため息をつくのと焦った様に宍戸が扉を開いくのは同時だった

「おい!!向日っ!」
つんざくような宍戸の声に岳人は名前からぴょんっと遠ざかった
それまで黙っていた跡部は、静かに近寄ると名前の手を掴んで指先を見た
「ふっ……宍戸
今のお前が言ってもな」
「うるせえ!いいからっ跡部、…血止めろっ」
息も切れ切れに言った宍戸くんはしゃがみこんで叫ぶ
宍戸君の反応に声も出ない私は、ビックリして跡部さんを見た
綺麗な額に少ししわを寄せたと思うと、もう指から流れる血は止まっていた
―――瞬間冷却。とでも言うのか、指先から流れ出ていた血液は一瞬のうちに固まっていた
宍戸君は前髪をかきあげて頭を抱え座り込んだ
―――息、しずらいの…?
黙り込んだまま宍戸君は向日さんを睨んだ
それを見て慈郎が口を開く




「ほらね?


たおれそうじゃん。」


第十五話へ
修正11/4/2

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