01


「兄様遅いなぁ…」


私は特にする事もなく王宮にある自室のテーブルに突っ伏し頬をつきながら足をブラブラさせ、まだ見ぬ兄様の帰りを待っていた。
順調に進んでいればいつもならもう帰ってきている頃なのに。


私の兄様――シンドバッドはこの国シンドリアの創国者であり自慢の兄だ。

そんな兄様は今日もシンドリア復興の為に出掛けている。
迷宮攻略かはたまた他国の視察か。
私にはまだ詳しい事を教えて出て行ってはくれないのでよくわからないけれど、まだまだ出来たばかりのシンドリアの為に駆けずり回っているという事は理解できた。
本当はそんな兄様の役に立ちたいと思っているのだけれども。
自分は何の役にも立たない、むしろ足手まといになる事は自分が一番理解している。
迷宮攻略者の兄様と違い私はなんの力もないただのお子様だ。

それに兄様が帰ってきたら冒険のお話を聞かせてもらうのも私の楽しみの一つになっている。
なのでこうやって毎回大人しく兄様の帰りを待っている。

…待っているのだがこうも遅くてはイライラを通り越し心配になってくる。



私には兄様だけなのに…



そう思ってふてくされていたら不意に廊下が騒がしくなった事に気づいた。
直感的に感じた私は慌てて部屋を飛び出して一目散に玄関を目指し走り出した。






「ただいま、ナマエ」

「兄様!お帰りなさい!!」


私は言うや否やぎゅっと兄様の元へ飛び込んだ。
そんな私を抱きしめ返してくれる兄様の腕のは暖かくて。
文句の一つでも言ってやろうと思っていた気持ちはいつの間にか吹き飛んでいた。


「兄様、今回は随分遅かったのね」

「あぁ、すまない。ナマエには心配をかけたな」

「本当に心配したんだか、ら…?」


その時ふと兄様の後ろ隠れるようにしている人影が目に入った。
見たことの無い少年。
年は…私と同じぐらいだろうか?
初めて見るその少年はどことなく影があり冷たい目をしていて私は何故か体を震わせた。
すぐさま目を逸らした私は兄様に疑問を投げかける。


「兄様、この子は…?」

「あぁ、紹介が遅れたな。こいつはジャーファルって言ってな…うーんとあれだ、拾ってきた」

「ひ、拾った!?」


さすがの兄様の言葉でも驚かざるを得ない。
私はとりあえず困惑しながらも兄様にジャーファルと呼ばれた少年の事を聞こうとしたら更に有り得ない言葉が飛び出した。


「そうだ、ナマエはジャーファルと年が近いし、シンドリアでは先輩になるんだ。ジャーファルに色々教える方々姉になれ!!」

「はぁ…えっ!?」

「何も本当の姉になれという訳ではない。実際ナマエの方がジャーファルより1つ下だしな。ただこいつに姉みたいに懇意に接してやってくれないか」


開いた口が塞がらないとはまさにこの事だろうか。
いくら兄様の頼みでもこればっかりは…
私は目を見開き兄様の顔を見上げる。
しかし兄様の顔は真剣そのもので。
冗談を言っているのではないと瞬時に理解できた。
そしてまたこうなった兄様止められないって事も。
一度決めた事は何が何でも貫き通す事は実の妹である私が一番わかっている。
私は溜め息を押し殺し兄様の後ろにいるジャーファルに目を向けた。





あぁどうやら私に弟が出来たみたいです







121114




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