ジャーファルさんヤンデレ注意。




カツーン、カツーン。
徐々に大きくなる規則的な足音がこの地下室に響き渡る。

あぁ、また今日も彼がやってきた。










「今日も元気にしていましたかナマエ?」


現れたのはシンドリアの政務官でもあるジャーファル。


「もういい加減にして!!ここから出してよ!!」


動く度にジャリ、と足と手に付けられた鎖が音を立てる。

私は今この地下室で監禁されている。
そう、目の前にいるこの男こそが私をここに連れてきた張本人である。


「駄目ですよ。そんな事をしたらまたアナタは何処かへ行ってしまう」


笑顔を浮かべたまま言うジャーファルだったが私にとっては恐怖以外に感じない。
不意に何かを思い出したように言うジャーファル。


「そうそう、今日ようやくナマエの葬儀の日程が取り決められました。
可哀想ですよね、まだナマエはここでこうして生きているのに…
けどこれでもうナマエの事は私しか知りませんよ。
まぁシンは最後まで納得してない様子でしたけど」


――頭の中が真っ暗になっていく。
確かに私が皆の前から消えて暫くたった。
ジャーファルから聞いた話だとシンの指揮の下国中あげての捜索も虚しく私の行方は掴めず。
とうとう死亡認定されたとの事。
シンだってまさか自身の右腕存在でもあるジャーファルが関わっているなどとは夢にも思わないだろう。
だけどそんな話は右から左へ抜けていって全く頭に入ってこなかった。



「…どうして…こんな事…」


私は声を絞りだしてそれだけ言うのがやっとだった。


「どうして?あなたが悪いんですよ。私にはナマエだけだったのに…
ナマエはシンやマスルールにさえその笑顔を向け
私はそれを見る度にどんな思いをしたか……」

「っ!ただ話し掛けただけ――」

「それでも!いつかナマエの中から私が消えてしまうんじゃないかと!私にその笑顔を向けてくれなくなるんじゃないかと!不安で不安で溜まらなくて……」


私の声を遮りジャーファルが大声を出す。
その声にビクッと体を震わせながらジャーファルの顔を見上げると必然的に目が合った。
気づいたジャーファルは微笑むが、どうしてか震えが止まらない。


「本当は私もここから出してあげたいですよ。
でもシンも、誰もナマエの瞳に映したくない…」


次第に近づいてくるジャーファル。
私は後ずさりを1歩するが、その度ジャーファルが更に近づく。

怖い怖い怖い怖い。
こんなジャーファル知らない。
いや、だけどジャーファルのこの目は――



「あぁそうだ、その目をくり抜いてしまったら…
誰も瞳に入れなくなりますね」

「っ!!」


背後に壁がぶつかり逃げ場が無いことを悟る。
そんな私の顔にジャーファルの手が伸びてくる。
もう駄目だと思った瞬間、
ピタッと私の目の数cm手前で止まった。


「…でも止めておきましょう。
今度はナマエが私を見られなくなる。
ナマエが私を見なくなるなんてそんなの耐えられませんから。
このまま私だけを見ていればいいんですよ、ナマエ」


そういってそのまま腕を私の体に回し抱きしめるジャーファルに
私は動くこともできずただ呆然と突っ立って抱きしめられている事しか出来なかった。


ただ、抱きしめられる前に見たジャーファルの目は昔出会った時の暗殺者のような冷たい目をしていて
私はもうここから――ジャーファルから逃げれない事を知った。




(狙った獲物は逃がさない)









121021





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