マスルール(モルジアナ)の場合
「やっぱりここにいたんだ、マスルール!」
私はようやくお目当ての人物であるマスルールを見つけてホッとする。
まぁあのマスルールがいる場所なんて限られてくるのだからこの訓練場所にいる確率は高かったのだけれど。
それでも早くマスルールに会いたかった私は走ってここまで来た。
もう息も切れ切れである。
本当に広すぎだろうこの城は。
よし、シンドバッドにあとで八つ当たりでもしておこう。
それにしてもなぜそんなに急いで来たのかだって?
それはこの格好を早くマスルールに見せたかったからに他ならない。
そう、私の今着ている服は―――
「マスルール見て!モルちゃんの服借りちゃった!」
「…!」
こちらに気づいたマスルールが訓練していた手を止める。
普段余り表情を表に出すことがないマスルールだが驚いてるのが見てわかる。
やった、作戦大成功!
実は今日はハロウィンという日で仮装とかをする日らしいというのをシンドバッドから聞き、
シンドバッドの思いつきでモルちゃんの服を借りて着てみたんだけど。
そしたらシンドバッドがマスルールに見せてこい、きっと面白くなるぞとか何とか言ってきて。
まぁ面白そうだて思って私も乗っちゃいましたが。
うん、さすがシンドバッド。
マスルールの驚いた顔なんて珍しいものが見れたよ。
やっぱり八つ当たりはなしにしてあげよう。
「その格好…」
「えへへ、モルちゃんから借りて着てみたんだけど、どう?スカートなんて久々に着ちゃったよ」
いつも動き易さを優先しズボンばかり穿いている私にとってスカートなんて数える程しか着たことがなくて。
そんなのだからスカートでの動きが新鮮でその場でひらひらと回ってみる。
ちょっとスースーするけど結構いいものだなぁなんて思ったりして。
そんな事をしていたら不意にマスルールの反応が無いことが気になり彼に視線を向けてみたら口元を隠すようにしながら顔を赤くしていた。
「えっと…マスルール?」
大丈夫?とマスルールに近づく。
マスルールの方が身長が高いので必然的に上目遣いなってしまう。
そんな私を見てついにその場にしゃがみ込んでしまったマスルール。
「マ、マスルール!?」
突然のマスルールの行動にオロオロする事しかできない私。
「大丈夫?誰か呼んで来ようか…」
助けを呼びに行くためその場を離れようとした私。
その時マスルールの突然伸ばされた手によって私の右手が掴まれ、行く手を阻まれる。
「…ナマエさん、それ完璧に不意打ちっス」
「…?」
「ただでさえ初めて見たスカート姿にときめいたのに上目遣いとか反則ですから」
照れながらそっぽを向いて言うマスルール。
思っても見なかったマスルールの言葉に今度は私が顔を赤くする番だった。
驚かせるつもりでいたもののこの反応は予想外で…
予想外すぎてどう反応したらいいのかわからない。
「じゃ、じゃあこれからはスカート穿くようにする」
なんとか頭をフル回転させ言葉を絞り出す私。
ちょっとなんか今自分でも恥ずかしい事言ってる気がしなくもないけどもう知るか!
そんな言葉を聞いてしばらく考え込むマスルール。
え、そこは即答するとこじゃないの!?
ちょっとショックなんですけど……
「…やっぱり嫌っス」
「え!?」
予想外の言葉に驚く私。
だけどそんな私の掴んだままの手を更にぎゅっと力を入れて握るマスルール。
「ナマエさんの可愛い格好は俺だけに見せて下さい」
「っ!馬鹿…」
今日わかった事はマスルールは意外と独占欲が強いという事。
だけどそんなマスルールも大好きなので、これからはたまにマスルールの前だけでスカートを穿こうと心に決めた日でした。
A.独占欲を発揮されました純情マスルール。
最初はスカートでパンツがどうとか変態なマスルールさんになってしまって急遽話を書き直したせいで時間がかかってしまいました(笑)
パンツの話は機会と需要が有りそうだったら書きます(笑)
121105
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