気づいてしまったこの気持ち




「ねぇ…キスしていい?」

「……は!?」



突然の俺の言葉になまえが固まる。
それもそうだろう。
心当たりはいくつかある。

まず第一にここは校則で恋愛禁止されている早乙女学園の教室だということ。
今は放課後で周りに人がいないので言えることだが聞かれてたりしたら退学だろう。

そして次が重要なのだが別に俺となまえは付き合っていない。
こうやって俺の課題に付き合って残ってくれてはいるがそれだけの仲だ。



「あのー音也さん、冗談はともかく早く課題を…」

「冗談じゃないよ」


驚くなまえの言葉を遮り俺は真っ直ぐなまえの顔を見つめる。


「音也、別に私達付き合ってないよね」

「――けど俺はなまえが好きだし、ずっと見てた」


今でこそ一緒に課題をやってくれる仲だがそこに至るまで簡単だった訳じゃない。
最初はただ見てるだけだった。
それでもなまえが楽しそうに笑うのを見る度に胸の中がくすぐったいような気持ちになった。
例えその笑顔が俺に向けられてるものじゃなくても―――そんな日々を悶々と過ごし、ようやくここまでこれた。
今まで築き上げた関係が壊れるのは怖い。
…だけどだんだん欲張りになった俺はそれだけじゃもう満足できないんだ。


「この学園が恋愛禁止なの位知ってるし理解してるつもり。だからなまえに付き合ってなんて言えないし言わない。ただ1回でいい。キスしたい」


真っ直ぐなまえの瞳を見据えて言う。
しばらく考えこんでいるのか俺達の間には沈黙が続く。
俺から言い出した事なのに心臓がバクバクいってうるさい。


「いいよ」


小さい呟くような声だったが確かに聞こえた声。
その声を皮きりにいてもたってもいられなくて俺はなまえの顔に近づく。
盛ってるって思われても夢にまで見た光景だ
そう簡単に我慢できる訳がない。

そしてそっと唇に触れる。
触れた途端感じる柔らかい触感と何時もより香るなまえのいい匂い。

あぁ俺、なまえとキスしてる。
どれだけ夢に見た光景だろう。
そんな事を考えながら短いような長いような時間が過ぎ、
俺は名残惜しくも唇を離した。

「……音也…」


そう呟いて俺を見るなまえは今まで見たこと無いような切ない顔をしていて。
俺はなまえにそんな顔をさせたい訳じゃなかったのに。
俺がやった事なのに。
どうなるか位わかってたのに。


「ごめんね。ありがとう」


そう言うので精一杯だった。



でも本音ではなまえが他の男にとられるくらいならもう俺以外考えられなくなればいいなんて
これで俺の事だけ考えて欲しいなんて
そう思ってた自分がいて
そんな自分が嫌になる。


だけどもう止められない。
もうなまえが好きだって気づいた時から
この思いは止められないんだ。




気づいてしまったこの気持ち
(気づいたからには止められない)







例えそれが君を傷つける事になっても





121004





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