聖川 真斗くんの場合
「真斗君、トリックオアトリート!!」
目の前の真斗君に向かって勢いよく手を出す私。
そう、今日はハロウィンだ。
やっぱりイベントは大事だよね。
特にハロウィンならお菓子も貰えるし思う存分楽しまなくちゃとワクワクする。
そんな私を訝しげに見てくる真斗君。
あれ…もしかして…
「真斗君、ハロウィン知らない…?」
「も、勿論その…はろういんとやらが何なのか知っているが、その…」
いや、絶対知らないでしょ。
はろういんって何ですか。
慌てる真斗君も可愛いけどこのままじゃ可哀想なので教える事にする。
「えっと、さっき言ったトリックオアトリートってのは『お菓子をくれなきゃイタズラするぞ』って意味でハロウィンの風物なの」
「あぁ!そういう意味だったのだな」
いや、真斗さん声に出ちゃってますよ。
知らないのもろバレですよ。
だけど真斗君の反応を見る限りお菓子は期待出来なさそうだな。
ハロウィン知らなかったみたいだし、真斗君は普段からお菓子持ってるタイプじゃないから『そんなもの持ってる訳ないだろう』とか言われそうだなぁ。
「そうだ、菓子だったな。ちょうど菓子ならここに…」
「ないですよねー…って、え!?」
そう言って真斗君が取り出したのはラッピングされた可愛いマフィン。
「わぁ美味しそうなマフィン!これどうしたの?」
「先程何故か神宮寺から持っているといいと言われて渡されてな。なるほど、こういう事だったのだな」
ありがとう神宮寺さま!!
まさかお菓子を貰えると思わなかった私は心の中でガッツポーズをする。
「これをなまえに渡せば良いのだな」
「うん。ありがとう真斗君!!」
わーいと貰ったマフィンを有り難く受け取る。
やっぱり美味しそうだなぁ。
「というかコレ手作り?」
「いや、そこまでは分からんが…」
綺麗にラッピングされてるし。
だけどこれ神宮寺さんが作ったのか?
いやいや、ないな。
きっと誰かから貰ったのだろう。
確か甘いもの苦手って言ってたしそれで真斗君にあげたんだろうと1人で納得する。
「それにしても美味しそう。こんな風に作れるなんて凄いなぁ。」
まじまじと手の中のお菓子を見てた私。
そんな私にじっと何か考えてた様子の真斗君が声をかける。
「なまえは…そう言った菓子などは作らないのか」
「私?私は無理だよ〜。不器用だしお菓子どころか料理なんてまともに作れないし」
ハハハと笑う私に対しふむ、と考え込む真斗君。
いや、ここは笑い流して欲しいんだけどな。
ふと真斗君がそれならば、と声をかける。
「ウチに嫁に来い。俺は料理は得意だからな。和食だったら何でも作ってやるぞ」
「っ!」
とびっきりの笑顔で言う真斗君。
ちゃんと意味わかってる?
きっと真斗君の事だから深い意味はないだろうけどそんな事を言われたら期待しちゃうよ?
A.プロポーズされちゃいました天然真斗
121026
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