どうやら新八先生は買出しに行ったようだ。土方先生に苛々されながら教えてもらい、名前はびくびくしながら職員室のドアを閉めた。

さて、どうしようかな。

ふう、と細く息を吐いて名前は下駄箱へと足を運んだ。今日、珍しく朝から機嫌よく起きれたので先生に告白しようと思ったのだけれど、なかなか捕まらない。まるで逃げているようで、名前は不満げに繭を顰めた。

「おう、どうした名前?怖い顔してるぞー」

「っ?!」

前から掛かった声に息を詰まらせて顔をあげると、新八先生が機嫌よく手を振っていた。

「先生!もう帰ってきたんですか?」

「お?ああ、そこまで昼飯を買いに行ってただけだしな、弁当だぞ弁当ー」

「昼飯って……もう放課後じゃないですか」

「金がなくてな!さっき土方さんに借りたんだよ」

ああ、だから土方先生機嫌悪かったんだ……。これには呆れてため息を吐けば新八先生が困ったように名前を見た。

「名前……?なんだよそのため息は!」

「土方先生、とっても機嫌悪かったですよ。帰ったら怒られるかもしれませんね」

「げっ……」

なんだかいつもと変わらない新八先生に安心しつつ、名前は彼を見上げた。別に逃げてるわけじゃなく、本当にただただタイミングが合わなかっただけなのかもしれない。

「そ、それじゃあ名前、俺は職員室に……」

「あ、待ってください先生!その前にお時間いただいてもいいですか?」

「お?珍しいな、なんだ?何かわからないとこがあったのか?」

「ち、違いますー!数学はちゃんと勉強してますから!」

「だよなー、お前いつも点数いいもんな!」

豪快に笑って新八は名前の頭をくしゃくしゃと撫で回した。こういう、なんだか大人なところがどうしようもなく好きだ。ぎゅっと手を握り締めて、名前は覚悟を決めた。

「あ、あの先生!」

「ん?なんだ?」

「……わ、私、新八先生が好き、です……!」

ざん、とまるですべてを切るように柔らかな花びらが待った。薄紅色に埋まった心底驚いたような新八先生の顔を、私はきっと、ずっと――忘れることなどないのだろう。




舞った想い


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