にせもの、ほんもの4


私の話をする。
それなりにポケモンバトルの上手い人。それが私。
チャンピオンとかジムリーダーにはなれないタイプだけれど、それなりに強い。そんな感じの私は、そこそこに挫折も味わっていたが、こっぴどい敗北は味わったことなく、きっと私の人生はこんな感じでやっていくと信じてやまなかった。
大体みんなジムチャレンジ自体はやっていたし、私はそこそこ強いから推薦ももらってチャレンジした。その5番目のジム。つまりアラベスクタウンで私は惨敗を経験する。
フェアリータイプに特別弱いわけでもない私の子たちなのに、作戦はポプラさんに全てめちゃくちゃにされてダメになった。
「あんたは応用力がない、だからポケモンたちも一緒に混乱しちまうのさ」
質問も他のチャレンジャーのときと全然違って、答えられなくて、それで。
目の前が真っ暗になりそうなくらいの悔しさで逃げ帰ろうとした、私に投げかけられた酷い言葉。
「あんた、やりたいことはないのかい」
優しくて、私の内側を鋭くえぐる一言だった。
ポケモンセンターに取っていた自分の部屋に逃げ込んだ。
次の日アラベスクジムを訪れたのは、当てつけだった。あの惨敗、次の日に再チャレンジしたからって勝てるわけもなかった。
のこのこやってきた私に、ポプラさんは優しくはしてくれなかった。
「来たのかい」
と一瞥。だけどどうしてか、追い出すこともしてくれなくて、私はずっとそこに立っていた。
同じ時期に街を出た同期がクリアする姿を偶然にも見かけて、逃げるようにスタジアム側を後にした。
私は何も言われないことをいいことに、ジムの中を好きに歩いていた。
アラベスクジムにはステージがある。うろうろしていた私は必然的にそこにたどり着いた。
そこではポケモンたちが思い思いの踊りをしている。私は端に立て掛けてあったパイプ椅子に腰かけてそれを見ていた。
後から聞いた話だけどポプラさん曰く、私が昨日手こずったステータスダウンもこの子たちのせいらしい。
「ここにいたのかい」
「あ、の……ここは?」
「まあ、昔取った杵柄ってやつだね」
ポプラさんも私の隣に座って、何も言わない。
「ぽかん」とよく聞く音がして、私のポケモン。メタモンが現れて、踊っていたチョンチーの姿に変わる。
私が制止の声をかけるより早くステージに上がって、光る提灯を振り乱す。
テレビで見たことのある、コンテストの真似事。
チョンチーと私のメタモンがぐるぐると踊っている。
ステップというには規則性なんてない動きだったのに、まるでステージのミラーボールみたいだと思った。
きらきらとした何かを纏えばきっとコンテストに出ていた誰かよりきれいに見えるって思ったんだ。

あのとき、そう思ったから。
私はジムリーダーにはなれない。

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