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あれからノボリさんと感動の再会わらいを済ませた私は仮眠室に連れてかれ、鍵を掛けたノボリさんに呪詛のように愛の言葉を呟かれ、そして抱き締められた。
そう、しめつけ攻撃再来である。
きっとノボリさんはゴーストタイプで使える技はのろいとしめつけるとハイパーボイスとかエコーボイスとかそういうヤツだ。(あとほろびのうた覚えてそう)
くそ、ハイパーボイス以外ゴニョニョからかけ離れてやがる。ついでにいえば私のとくせいは『ぼうおん』ではないようだ。
そのままベッドに押し倒されてしまった。(字面如何わしい)
「もう、離しませんよ」
ぎちぎちに人の中身を出そうとしている人が何を言うか。
私は大型犬かなにかが甘えてきているぐらいなつもりで、頭を押し付けてくるノボリさんの骨張った背中に手を回して撫で回したりしていたわけだ。
気持ち的には一時間ほどノボリさんを実感させていただいた。
「ノボリさん」
「もうあなた様と離れたくないのです」
「あ、離さなくていいんで私をどうにか雇ってもらえませんか」
私は約半日、ぼっちでバトルサブウェイでノボリさんにいつ突撃するか謀っていたのだ。
私のノボリさんを求めて、たとえ火の中、水の中な大冒険を盛ってダイジェストに語ったのだ。嘘です、盛ってない。

いつの間にかライモンシティの真ん中にいた私。残念ながら頭を打つ、気絶する、寝ている間、扉を潜る、落とし穴、それら全くなしにいつの間にかである。
トリップっぽくないトリップだ。
おかげで犬だあーと見たらヨーテリーじゃんうわああと一人でキョドらなくてはいけなくて、恥ずかしかった。
いつまで経っても戻らない私は人見知りながら、人に聞いたりいろいろしてやっとノボリさんにたどり着いたのだ。
特にここまで一緒に来てくれた女の子かわいかった。あ、親切でした、しぃーわずべりーかいんど。
そんな私だが、ノボリさんと私の世界の時間の違いを考えてもしかしたら「帰れないいい!!」って泣きついて、速攻で帰ってしまうとか嫌だなあと思ってストップを掛けていたのだ。
まあ例によって意思の弱い私はノボリさんとクダリさんをセットで見掛け、飛びついたのだ。
気持ちだけは「来ちゃった☆テヘペロ」な少女漫画なヒロインですとも、いや可愛くないだろうけど。
つまり私は無職無一文ついでに無戸籍。(もっというなら無ポケモン)そして今のところ帰れる保証もなし。
ポケモンがいたならめざせ、ポケモンマスターと言わんばかりに、俺はこいつと旅にでるんだけど。
「わたくしの家に来ればいいじゃないですか」
「いや、私はいつ帰れるか分からないですし」
「では分かるまで、いえ分かってもいてくださいまし」
話が通じない!!ノボリさんが最初の会った時まで初期化されてしまったのか。
「ノボリンちょっとストップしましょう」
「の、のぼりん……?」
「いや、それはいいですから」
ノリで言ったから蒸し返されると恥ずかしい。
「ノボリさんのときと違って私は一夜じゃないかも」
「わたくしが養います」
しまったこの人割とすごいポストにいるんだった!!
「帰れるかさえ分からない」
「むしろ帰らないでくださいまし」
「え、ええー」
なんでこんなにノボリさん積極的なの、私と会わない間にノボリさんどういう成長したんですか、誰だここまでしたのは。出て来い犯人一発殴る。
「愛しております」
「いや、あの」
「あなた様のそばにいたいのです」
「えっと」

「だめ、ですか」

……だから誰ですか、この人にこんな高度な駆け引き教えたの。なんですかこの人、さっきまでキリッて感じで私口説いてたのに、なんでこんな泣きそうな顔なんですか、私はこの人のこの表情に弱いのに。
「なまえさま、おねが」
「やめてください」
「……なまえさま」
だからなんでこの人は悪い方ばっかに考えるかな、これは私のせいだけど。
「ノボリさん」
ぎゅう、頭を押し付けてやる、このもやしめ。良い筋肉じゃないですか。
「好きですよ」
だからそんな顔しないでください。




心配事はたくさんあった。
正直にいうならノボリさんは私があの時からストレス解消機みたいな感じになっていたから、その効果で、いや副作用で私のことが魅力的にでも見えた。勘違いってことじゃないか、他にいないから、だからこんな私がそこまでに見えた。とか、まあいろいろ。
本当に不安なのだ。私はこのへタレで変なとこ吹っ飛んでてクダリさんに劣等感感じちゃうノボリさんがラブなのだ。
もしここで本当のヒロイン的存在が現れてあっさりノボリさんのハートを奪っちゃったりしたなら、私はどうなる。
生活とかもろもろを置いておいても私は立ち直れる気がしない。
今はノボリさんの家に住まわせてもらい、事務員(という名のノボリさん専用雑用係)になり、事務員内の内乱に巻き込まれながらもそれなりにやっている私だ。学生やっていましたけどこの世界ではあんまりおかしくないらしい。
ノボリさんに捨てられたならそれなりにやっていき、どうにかシンオウに行って主人公さまに会ってパルキアか何かにお願いするとか、しちゃえばなんとかなるでしょ。
なせば成る。あちょっと今の私かっこいいかも。
「なまえさま」
相も変わらず私をしめつけ攻撃もとい内臓を出そうとしているノボリさん。
「なんですか?」
「好きです」
慣れないわ、この人ストレート過ぎるなあ。でも間を開けるとあの顔するからな。
「私も好きですよ」

「結婚しましょう」

「は?」
ノボリさんが斜め上に吹っ飛んでるのはあの私のトリップデーでわかっていたが、ここまでとは。
「なにより形が出来ます。誤魔化していたあなた様の戸籍も取れますし、あなた様はわたくしが好き、わたくしもあなた様を愛してます。なにが問題なのでしょう」
「いや問題だらけですよ」
私たち付き合うって行程飛ばしてるのに、まだ飛び級ですか。
「わたくしは不安なのです、もしあなた様がわたくしから離れないか」
クダリに奪われたりしないか、ちっさくとてもじゃないがこの距離でなければ聞き取れなかっただろう言葉。
「あのですねえ、私クダリさん怖いんですよ」
ありえないぐらい目が笑ってない社畜(白)に私は恐怖を感じてる。白はもしかしてもしかしなくともブラコンだろ。
ついでに言えば、白というのは恐怖心を和らげるために私が無断で心の中で呼んでいる。
「ですが、もし!!」
「いやというか信じてくださいよ、そのくらい」
「……」
あ、またあの表情、写真撮ってやろうか。
「私が信じられないって言うんですか!」
いらっときたから泣きまねしてみれば、わかりやすくあわててくれるノボリさん。さすがです、期待通り。
「そういうわけでは、そういうつもりは……」
まどろっこしい人だ、そんなあなたが大好きですよこのやろー、まだ言ってあげませんけどね。
私は「もう喋るなよ(キラーン)」みたいなつもりで、所謂ディープキスで彼の私より綺麗だけど少し荒れた唇を塞いでやった。
12.12.25

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