課題しろ


「ああ!!もういやあ!!!」
がたんと立ち上がった私の方を若干冷めた目で見てくるクダリ。
「なに、終わったの?」
「もういやだああ」
バタンと埃がたつのも構わずにソファーに座るクダリの隣にダイブする。
嫌そうな顔にしたいのはこっちだってのに。のんきにテレビなんて見ちゃってさー。
「……ふん」
立ち上がったクダリが私が今まで向かっていたノートたちを摘み上げて覗き込む。
「終わってないじゃん、ぜんっぜん」
「……」
はああ、と深いため息に耳が痛い。
そのままソファーのふかふかに顔を押し付けて聞こえないふり。
「せっかくの僕の休み、君と一緒に出掛けたかったのになあ」
「……」
「なーんで課題が終わってないのかなー」
「クダリだって一緒ならどこでもいいって言ったじゃん」
つい言ってしまう。仕方ないじゃない、だって終わらなかったんだから。
「でも課題に君が夢中なんて僕は嫌だよ」
「夢中なんかじゃない」
むしろクダリに夢中になりたいぐらいには私はバカップルの片割れを担っているつもりだったのだが。
「でも期限明日なんでしょ」
「うん」
「じゃあしなくちゃいけないんでしょ」
「うん」
「じゃあ僕に夢中なんてなってくれないでしょ」
「……」
それについては答えかねたい。だって、だって……。
「なまえ、めんどくさい」
「へ」
あ、やばい。怒られる。
「正直さあ、なまえって僕よりかなり暇でしょ。
ほら僕ってば朝から大っ好きなバトルのために夜までずっと仕事。今日も君とのひさっびさの休みのために死んじゃいそうなくらい頑張った。
今日はその分君に甘やかされにきたのになにそれ。
ねえそれ必要?
だからさあ、僕ずっと言ってる。僕んとこに永久就職するんでしょ。辞めちゃえって。だって僕そんなのどうでもいい、いいよやめなよ」
泣きそう、泣きそうというか涙出てきた。
「苦しいんでしょ?もう嫌なんでしょ?」
「う、あ」
クダリはぺいっと摘まんだノートを机の上に投げた。つまらなそうな目が私を責めるように見てくる。
「でもしたいんでしょ、どうせ最終的にやるんでしょ」
「……うん」
「じゃやれ」
はあ、とまた深いため息をついたクダリがソファーに戻った。代わりに私がとぼとぼと机に戻る。
「なまえなまえ、やる気が出るおまじないしてあげるおいで」
「う、うん」
四つん這いではいはいのようにクダリに近づく。
私の頬に手を添えたクダリ、うん?
これはキスってことか、と目をつぶった私の額に柔らかい感触。
目を開けた時にはこっちなんて目もくれずテレビの方を見ているクダリ。
「続きは後で」
かすかに見えるクダリの唇はいつものように弧を描いていた。このドSめ。


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