この狂った愛を君に


「篤、好き」

俺の中の篤への恋情が溢れて言葉になる。
囁かれた篤が耳を赤くして視線を逸らすのはいつものことだ。

なかなか応えてくれないことを知っていて、隙があれば口をついて出る愛の言葉。
自分でも意識しているわけじゃない。
ただ、溢れてくるから言葉に乗せるだけ。

照れていることを隠すように憮然とした顔を造るけれど、耳の赤さは隠せない。
何度かに一度は俯いて「俺も」と返ってくるのが可愛い。

でも・・・

篤に「好き」って言われるのは辛い。

君に好きって言われる度、上手く笑えているかな。
君に好きって言われる度、鈍い痛みが胸を襲う。

君の「好き」と俺の「好き」が違うことを知っているから。

君の「好き」は甘くて優しい。
俺の「好き」は苦くて苦しい。
君の「好き」は相手を包んで守ってくれる。
俺の「好き」は相手を壊して喰らい尽くしても足りない。

いつか篤も俺自身も壊して狂わせてしまうかもしれないけれど、もう手を離すことなんてできないから。

だから今だけは
俺の腕の中で笑っていて・・・


[0]小説top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -