この狂った愛を君に
「篤、好き」
俺の中の篤への恋情が溢れて言葉になる。
囁かれた篤が耳を赤くして視線を逸らすのはいつものことだ。
なかなか応えてくれないことを知っていて、隙があれば口をついて出る愛の言葉。
自分でも意識しているわけじゃない。
ただ、溢れてくるから言葉に乗せるだけ。
照れていることを隠すように憮然とした顔を造るけれど、耳の赤さは隠せない。
何度かに一度は俯いて「俺も」と返ってくるのが可愛い。
でも・・・
篤に「好き」って言われるのは辛い。
君に好きって言われる度、上手く笑えているかな。
君に好きって言われる度、鈍い痛みが胸を襲う。
君の「好き」と俺の「好き」が違うことを知っているから。
君の「好き」は甘くて優しい。
俺の「好き」は苦くて苦しい。
君の「好き」は相手を包んで守ってくれる。
俺の「好き」は相手を壊して喰らい尽くしても足りない。
いつか篤も俺自身も壊して狂わせてしまうかもしれないけれど、もう手を離すことなんてできないから。
だから今だけは
俺の腕の中で笑っていて・・・
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