ワーストハッピーエンド予告動画進行状況
2012/09/01 01:32
雨が降ってきた。
それはあまりにも唐突なもので、多くの人々は軒下で雨宿りをしている。
斎藤も例外では無かった。
ずぶ濡れになった黒髪からは水が滴り、浅葱色を侵食していく。
平隊士の中には、退屈そうに地面に座り込む奴もいた。
見回りは一時中断と言ったところだろう。
雨足が強くなる。
斎藤は顔をしかめた。
止む気配がない雨に苛立ちが積もっていく。
「隊長」
「どうした?」
一人の平隊士が躊躇いがちに斎藤を見上げる。
最近入ってきた新入りだ。
「その…少し、腹が減りまして…だから、えっと…何か食べたいな、と…」
「おい!何言ってるんだよ!」
見たところ、斎藤より少し若い。
動いた分腹が減ったのだろう。
可愛げのある新入りだ。
新入りを叱り付ける男に、斎藤は言う。
「よせ、それくらい構わないだろう」
「隊長!」
「歓迎も含めて蕎麦でも奢ってやる」
―どうせ雨も止みやしない。
そう付け足すと、斎藤はすぐ後ろにある店に入った。
気の所為か、新入りの表情が明るくなる。
店はお昼時が過ぎたからか、予想に反してすいていた。
斎藤が人数分蕎麦を頼むと、平隊士達はお礼を言いながら席に座っていく。
次々と運ばれて来る蕎麦を横目に、斎藤は瞼を閉じる。
平隊士の明るい声が斎藤を安心させた。
壁に寄り掛かると日ごろの疲れからなのか、徐々に睡魔が彼を蝕んでいく。
そのまま身を委ねると、すぐに寝てしまいそうだった。
「隊長、雨止みましたよ」
新入りの声に瞼を開け、寝ぼけた頭で店の外を見る。
先程まで降っていた雨が嘘のようだ。
太陽が照り付け、気の所為なのか陽炎が見えた。
面倒臭そうにため息を吐き出すと、蕎麦をかきこむ平隊士に斎藤は言い放つ。
「早く食べないと置いていくからな」
斎藤の一言にいっせいに焦り始める平隊士。
その光景がおかしくて、斎藤は笑い声をもらした。
三番隊はなんだかんだ言って斎藤さん大好き。
あと新入り大切にしてたりすると神得。
prev | next