西洋のお菓子って美味しい物が沢山あるのよ!甘露寺さんはそう言って、色々なお菓子を教えてくれた。きっと冨岡さんだって喜ぶはずよ!すず乃ちゃんに惚れること間違いなしよ!なんておだててくれるものだから、私はすっかり乗り気になった。甘露寺さんにみっちりと指導してもらい、一人でもまともに作れるようになったはずだ。まあ両手で収まるくらいに失敗はしたが、私はめげない!それが私の良いところなのだとお館様も言ってくれていたもの。出来上がったお菓子は、甘露寺さんが作ったものとは多少造形が違うものの、試食した限り味はかなり近いような気がする!これだったら、冨岡も喜んでくれるに違いない!

「まずい」

任務帰りの冨岡を見つけた。美味しいお菓子があるんだけど、そういって自宅に招き入れる。私が作ったことを伏せて出した。なんだこの美味しいお菓子は!どこで売っているんだ?それは私が作ったもので〜などと妄想までしていた。しかし今、冨岡はなんと言った?

「え?」
「これはまずい」
「なに?」
「ま ず い」

ゆっくり言わなくたってもう三度のまずいは聞こえている。嘘だろう。私の幻聴ではないだろうか。まずいはずなかろうに。こんなに美味しそうな見た目だし、匂いだっていいじゃないか。

「ちょっと一枚食べさせて!」
「一枚と言わず、全部食べるといい」

うるせー冨岡!と言いたい気持ちを抑えて、皿に盛られた大量の焼き菓子へ手を伸ばす。鼻先に香るのは甘くいい香り。と、ちょっと焦げ臭い。まあこれくらいはご愛敬だろう。一口大のそれを口へ放り込む。ほらやっぱり美味し……あれ、おかしいな。昨日食べた時はこんな味しなかったはずなのに。あれ、これは確かに、うん。

「まずいだろう」
「うるさい冨岡。それ以上喋んな」
「……これはなにかの遊びなのか?」
「うるさい!」

理不尽だ!と顔に書いてあったけど、今はどうにも説明する気にはならない。しかしどうして、こうなった。もう一口、自分の口へと運ぶ。匂いはこんなに甘くていい香りなのに。

「まっずい」
「だろう?」

自信ありげな顔に腹が立って一発ひっぱたく。唖然とした冨岡の手中にある焼き菓子を取り上げて、私は甘露寺邸へと走った。後ろで冨岡が何かを言っていたが、声が小さくて聞こえなかったので足を速めた。


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