「顔が赤いな」

貴方が近くに居るからだと言えたならどれだけ楽だろうか。いや、冨岡さんの事だから言ったところで理由が分かるとも思えない。分かっていたら、こんなにもどかしい気持ちになんてならないのに。いつだって私は冨岡さんに恋をしている!貴方を見つける度に心が跳ねるし、近くにきてくれるだけで幸せだし、名前を呼ばれて尚且つそのまま話しまでできたら顔だって赤くなるんだ。

「熱があるかもしれない」

冨岡さんの冷たい手が私のおでこに添えられる。ああもう、そうやって無防備に私の肌に触れて。触られれば触れる程、私の体は熱をもって、赤く赤く熟れてしまうというのに。なんて罪な人なんだ。触られて興奮したせいか、なんだか目の前まで真っ白になってきたような。

「……だ、めかも」
「袖ヶ浦、しっかりしろ」
「これは、熱で、しょうか」
「いいから黙っていろ」

冨岡さんへ恋い焦がれ過ぎて出た知恵熱かもしれません。なんて事を考えられるんだから、私は目眩がしてすぐはまだ余裕があったらしい。
担ぐぞ、と言われたところまでは覚えている。見覚えのある天井。ここは蝶屋敷だ。私は焦がれたそれではなく、本当の熱だったようだ。
ここまで運んだのはきっと冨岡さんだろう。なんて優しい人なんだ。ますます好きになっちゃうな。それにもしかしたら、冨岡さんも私の事を好いているかもしれない。だってそうじゃなきゃ、きっと私は道端で倒れたままに違いないもの。
今、誰かが手を握ってくれている。この手が冨岡さんならば私の気持ちを伝えてもいいだろうか。


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