髪がかきあげられ、柔そうな肌が露わになる。指で突けば簡単に赤くなりそうなほど白いそこは、ひどく美味そうに見えた。
ああ、食べてしまいたい。しかし、彼女は怒るだろうな。
「いっ……!!」
そう思ったときはもう遅かった。本能のまま、そこへと齧りついていたのだ。歯を立てた頸は見た目通り柔く、口を離すと白にくっきりと朱が浮び上がっていた。
すず乃は俺を振り返って、そうしてすぐ掌が飛んできた。受けても良かったが、一発では済まないと思い掴んだ。震える手のひらの先にある爪はさきほど塗ったばかりのテラコッタが艶めいている。
「煉獄!」
「暴力はよくないぞ、すず乃」
「はあ?人のこと噛んでおいて、なに言ってんの」
少しでも力を緩めたら今にも飛んできそうなくらい力のこもった掌。気の強さが現れたそれが彼女らしい。笑っていたら、伸びた爪が頬を掻いた。じわりじわりと頬から痛みが伝わる。
「ふんっ!」
鼻を鳴らして睨みつけた。その姿は家へよくやってくる猫を思い出させた。猫のようだと思ったらまたいっそう柔そうに見え、頸へと歯を立てていた。