夏と言えばサンダル。足の指が無防備に晒される時くらい可愛くしたい。逆を言えば冬はそんなに気にならない。なんて言ったら女子力が低いと言われそうだ。それにしても、器用じゃないわりに、今日はなかなか上手く塗れている気がする!右足が終わってさあ左足、と思ったらやけに感じる視線。そんなに面白いもんでもないだろうに、煉獄はさっきからずっと熱心に爪へ向かう刷毛の様子を見ているのだ。

「なに?さっきから」
「いや、面白いなと思ってな」
「結構めんどくさいんだけどね」

そう、可愛いには時間と手間がかかるのだ!自己満足な部分が大半を占めるが、やっぱり恋人には可愛いと思われたいのが女の子というものじゃないだろうか。左足に取りかかろうと思ったが、色々考えていたらなんだか疲れてしまった。乾かしがてらアイスでも食べて休憩するか、と夏に負けないくらい鮮やかなオレンジを乗せた刷毛を瓶へと戻す。冷蔵庫へ向かおうと椅子から立ち上がると、煉獄はすかさずその瓶を手に取って床へと座った。私の手にあった時は当たり前の大きさで違和感はなかったのに、煉獄の手にはいるとやけに小さくて子供のおもちゃのように見えた。

「塗ってもいいか?」
「えっ、なんで」
「左足、ここに乗せて」
「いやいや、頼んでないんですけど」
「減るもんでもないだろう。ほら早く」

マニキュア減るんですけど。そう言いかけてこんな機会も早々ないかと叩かれた膝の上に乗せると、小さな瓶から運ばれるオレンジ。たかがマニキュア。されどマニキュア。いつにも増して真剣な表情をしている。こんな顔、部活の試合の時くらいしか見られないんじゃないだろかってくらい真剣。あんまりにも真剣だから、わざと揺らしてやろうかと思ったくらいだ。
しかし、いつも見下ろされてばかりいるので、こんな風に見下ろすのはなんだか不思議な気分だなと、つむじを見ながら思うのだ。


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