もうあと数ミリで唇がふれるというところで
彼女はピタリと動きを止めた。
あの、と言った彼女の吐息が直にかかる。
さっきまで舐めていたあまいあまい、あめ玉の匂いがした。

「口と口をつけるということは」

距離なんて気にしもしてないという顔で言った。

「そこから心臓が繋がって一つになるということです」
「……君は一体、なにを言っているんだ」

言葉より、かかる息の近さが気になった。心臓が締め付けられるような感覚を感じる。
彼女の目は俺の目を見てるはずなのに、もっと奥を覗き込まれているような気分になった。

「そのくらいの覚悟が必要だってことです」

俺は気が付かなかった。じわじわと距離が詰まっている事を。
彼女は言い終わるとすぐに、目の前にある唇を重ねた。唇は、少しだけかさついていた。
今ここで口をあけて、舌を入れたりしたら心臓ごと食われそうだと思った。

否、彼女が言ったことが正しければ。
俺はもう既に食われているのだろう。


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