「煉獄さん」

名前を呼びながらリビングのドアを開けると、ソファに座って高校野球を見ていたであろう彼がこちらを見た。

「お帰り。今日は随分と時間がかかったな」
「親知らずを抜いたんです。そりゃあもう大手術でした」
「そんな大袈裟な」
「いやだって、歯茎に穴ぽっこが空いてるんですよ?見ますか?」
「見せなくていい」
「どうしてですか?なかなか見れないお宝映像です」
「俺は君の体に穴が開いていると思うと辛いんだ」
「はあ。よく意味が分かりません」
「大切な君の体の一部に穴が開いているなんて耐えられないと言っている」
「いやいや。むしろ良くするための治療ですよ」
「それでもだ」

プイッと顔を背けた煉獄さんの姿を見たまま、ぽっかりと開いたそこに舌を這わすと鉄の味がした。
ポケットに入った可愛い顔の描かれたケース。そこに入ったいる抜いたばかりの親知らずを見たら彼は倒れるだろうか。
私はそれを見せるためにもう一度彼の名を呼んだ。


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