「お帰り」

玄関の戸を引くと、そこに彼は座っていた。
私と共に風が吹き込んだ。いつもなら揺れるはずの彼の黄金は、揺れていない。

「どうしたの」

一瞬言葉が詰まって。それから確かめるように言った。
私が大変おかしい顔をしていたのだろう。目を細めて彼が笑った。

「いいだろう?」

笑った顔よりも、覆われている時は分からなかったやけに形の良い頭が目につく。
あまりに短いそれは五厘だろうか。髪の隙間から焼けていない肌の白が露になっていた。

「一度くらい良いかと思ってな」
「いやいや。駄目とは言いませんけど……ええ」

坊主。
今朝玄関を出た時までは燃えるように従えていた髪はすっかりと姿を消してしまって。
整った顔。坊主にしたからだろうか、髪に分散されていた視線が全て顔へ向いてしまう。
触りたい。そう思った時にはもう体は動いていた。

「ほわほわ」

乱暴に脱ぎ捨てた草履。
玄関ではしたないと怒られるのもそっちのけで、膝を折って床につけた。
近くで見れば、短くともそこは黄金畑で。キラキラと光を吸収して、反射する。

「こら」
「いがぐりっていうより、たんぽぽの綿毛みたいです」

指を這わせば、ふわふわと風に乗って舞ってしまいそうなくらい柔らかかった。


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