「錆兎って犬みたい」
「なんだ、藪から棒に」
「いやあ、忠犬!って感じがする」
「はあ」
「ほら、こうやって私の部活が終わるまで待っててくれるところとか」
「それで?」
「髪の毛も、なんか犬っぽい!」
「なんだそれは」

訳が分からないぞ、と錆兎が笑う。美術室に漂う独特の匂い。私の部活がある水曜は錆兎の剣道部が休みだ。休みなら家でゆっくりすればいいのに、こうやって部員が居なくなった後も最後まで付き合ってくれるところが実に忠犬っぽい。それに、剣道部の試合を見に行くと絶対に入り口まで迎えにきててくれるところとか、正義感が強いところとか、嘘つかないところとか。うちに居る柴犬を思い出す。錆兎は犬だったらもっとふさふさでしゅっとした感じなんだろうけど、忠誠心はうちの子と変わらないような気がする。

「俺が犬なら、すず乃は猫だな」
「えー?飼い主でしょ?」
「こうやって、いきなり意味わからない事を言って。自由気ままなところがある」
「それって褒めてる?」
「褒めてはない。が、お前の家の子たちを思い出す」
「ああ、確かに」

柴犬と猫がいる我が家の光景をまざまざと思い出す。一生懸命猫についてまわる柴犬だ。つれない態度をとって柴犬はいつでも猫に振り回されている。でも、なんだかんだ猫の方も柴犬が好きなようで最後にはぴったりと寄り添って寝ている。確かに、私と錆兎はそんな感じだなあ。

「まあまあ仲が良いってことで。片付けも終わったし、帰ろっか!」
「ああ、そうだな」
「今日も付き合ってくれてありがとうね」
「忠犬だからな、俺は」

錆兎が笑う。差し出された手を握って、私たちは昇降口へと向かった。


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