「ふかふかだーっ!」

ぼふん、と音をたてて干したばかりの布団に飛び込む。千寿郎くんが朝一番に干しておいた布団は、お日様を浴びたおかげでそれはもうふっかふかになっていた。縁側に寝てくださいと言わんばかりに広げてあるのだから、誰だってそうすると思うわけで。

「あっ、すず乃さんだけズルい!僕も!」

ふかふかな布団に、ふわふわな千寿郎くんが飛び込んでくる。二人寝転んでもまだ余裕のある布団は昼寝の誘惑にはあまりにピッタリなものだから。
どちらからともなくこのまま寝てしまう雰囲気になって。あっという間に二人して寝息を立ててしまっていたらしい。

「むぅ」

昼飯を済ませて家に戻ると、縁側にすず乃の姿が見えた。やけに静かなのが不思議でよくよく近付いてみれば。彼女の隣には千寿郎がいて、二人して丸くなり猫のように寝ているではないか。

「……なんともこれは」

聞こえてくるのは二人の規則正しい寝息だけで。
夕方にはまだ早い時間に、なんとも羨ましい限り。
布団を取り込む間に、気持ちよくなって寝てしまったのだろう。
こういう時の二人はやけに意見が合うようだからな。

「おい。すず乃、千寿郎」

元から起こす気なんてないが、一応名前を呼んでみる。が、やはり返事はない。
すず乃のおでこに張り付いた前髪を払ってやると、こちらに顔を向けるように身動ぎをした。

二人を見ているとこちらまで眠くなってくるようだ。
寝ている姿は二人ともまだまだ幼くて。
いつも二人で留守番をさせてしまって寂しい思いをさせてないだろうか。
起きたらお土産に買ってきた饅頭を食べようと誘うことにしよう。
それから。それから。

「なんだこれは」

玄関を開けても誰も出てこず。声をかけても静かだった。人の気配の方へ向かって歩いてきてみれば。すやすやと3人揃って寝息を立ている。
千寿郎とすず乃はまだいい。杏寿郎まで揃ってとは、なんと平和な事か。

「お前が見たら、なんと言うだろうな…」

妻がこれを見たならば。きっと、このまま寝かせてやろうと言っただろう。
確かにこんな幸せそうな顔をして寝ている姿を見てしまったら。
誰だって、とても起こす気にはならないだろう。


訪れたる平穏
(できる事ならば、お前にも見せてやりたい)


(20191017)


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -