冷たい手


あなたの手はいつだって冷たい。








好きだと言って肌に流れるあなたの手。

冷たい。

「冷たいのね…」

「ん?」

「手…」

「マジで?あっためといたんやけど」

そう言って手のひらをこすりあわせる。


違うわ。

体温じゃない。

この冷たさは。


「……いいのよ。来て…」

離れた手を再び引き戻した。

冷たくたっていい。

この手がいなくなるよりずっといい。




「…好きや……玲華…」

耳元に落ちる低い声。そして重なり絡み合う指たち。

「愛してるって言って…」

「…」

小さく呟くわたしの叫びに羅刹は何も答えない。ただ私自身に入り込むだけだ。

嫌いではない。

私は羅刹を愛している。

言葉なんか重要じゃない。

大事なのは今、誰が誰を抱いているかってこと。







そんな風に思えたら、わたしはこの手を冷たいなんて感じない。





羅刹。





冷たい手。



きっと、私以外の女を抱くときだってこんなに冷たい手をしてるはず。



だって、羅刹の温かい手はたった一人のもの。



たった一人の、もうこの世にはいない女性の、唯一のもの。





もしくは…






「羅刹…」

「何」

「愛してるわ」

「俺も」

「…愛してくれてるの?」

「……好きや」










冷たい手。




あなたの冷たい手に、わたしは今日も抱かれる。










end.
















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