年上のネコ
大好きだから別れるの。
そう言って、甘い香りをシーツに残し消えていった。
昨日の情事は夢だった・・・?
やわらかい唇に、触れた指先。
官能的な首筋に、しなやかな脚。
あなたを抱いたこの腕に、しみつく香りは誰のもの。
窓には大粒の雨。
真っ赤なトレンチコートに身を包み、猫のようにくならせ消えていった。
肩先から見えた横顔に、昨日の泣き顔はない。
「もうだいじょうぶ」
強がった言葉にいとしさを感じたけど、あなたは未練なく消えて、僕の心を奪っていった。
雨は昨日よりもひどくて、嵐がきそうだ。
傘は必要だったろうか。
それともどこかで雨宿りをしているだろうか。
シーツに顔をうずめ、僕は甘い香りで肺を満たした。
別れるときは嫌いになったときだ。
好きだから別れるの。
納得できないあなたの言葉に、僕はどれだけ悩まされるだろう。
「年上のネコ」・・・君の言葉に悩む僕
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