(創作)
そこにはなんの感情も含まれていない。 あるのは「消えたい」のと「消したい」の単純な動機だけ。
群青のブレザーにエンジのネクタイは地元でも有名な進学校の証だった。周りの目も変わってくるので、一種のブランドのような力を持っていた。偽物の制服や、似たようなデザインの小物が出回っていて自分が今着ているのものもその辺の裏で買ったフェイクの制服だ。
「○○高じゃん」
頭の悪そうな女たちがひそひそ話す。
「偽もんじゃね?」 「いやホンモノっしょ」 「てかかっけぇ」
進学校のホンモノがこんな時間こんなとこにいるわけねーだろ。なんて思いながら女たちの言葉にため息をつく。
ほんとにどうしようもない。
偽物の決まってるだろ。
フェイクだよフェイク。
大声で叫びたい。
ガードレールに腰かけて、肘をつく。至極だるい。すべてがムカツク。
「殺してくれないか」
聞こえてきたのは確実に自分に向けられた声。振り向くとそこにはサラリーマン風の、くたびれたスーツに白髪混じりの中年の男がいた。
「急にすまない。殺してほしいんだ」
すまないと言うわりに物騒な要望を伝えてきた男の表情はフェイクじゃない。
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