何時ものように昼休みを告げるチャイムが鳴ると鞄を握って走り向かう。生徒からの不審そうな視線や教師の注意を促す声を聞く前にわたしは走る。早く、早く行かないと。

急いで着いた裏庭には既に先着がいた。わたしは息を整えるのとついでにはあ、と溜息を吐いた。

後ろを振り返りわたしの姿を確認した先着がニヤリと笑う。

「また俺の勝ちだな」
「北城は卑怯過ぎるんだよ。わたしと同じように授業受けてから来て」
「あァ?んなめんどくせーことするわけねぇだろ」

そう言って先着でありここ最近わたしのライバルである北城は、わたしが急いで来た目的の子猫達に餌を与えていた。凄んで誤魔化されたが本当は知っている。北城自身が自分の言動などで周りから怖がられていることを。それを面倒だと言って距離を置いていることを。
勿論友達はいるようだし、わたしだって北城のことを面白いやつだって思っている。それでも北城には、まだ、何か足りないのかもしれない。毎日学校にくる為の目的が。

「あーあ、折角牛乳持ってきたのに」
「テメェが飲めばいいじゃねぇか」
「わたし牛乳嫌い。もういいや、北城が飲んで。そしてもっと背が伸びて教室入る時に頭ぶつければいい」
「んだと!?テメェ喧嘩売ってんのか!?」

青筋を浮かべて引きつった顔をしているやつに悪戯げな笑みを浮かべて子猫の一匹を抱き上げた。茶色の斑模様が特徴なこの子猫はチビというらしい。ちなみに他の子猫もチビという名前らしいから、北城にいい名前を付けてやろうという誠意はないらしい。チビはニィニィ鳴いてわたしの指に甘噛みしてくる。

「そういえば、この子達家で飼えないの?」

ふと思い立ったのだ。もう直ぐで梅雨の季節になるし、そうなったら毎日ここに通える訳でもない。何より子猫達の体調が心配だった。

北城は複雑そうな顔をして「いや、飼えるけど・・・」と言って言葉を詰まらせた。どうしたのかと顔を覗き込んだら、何故か北城の顔は赤くなっている。熱でもあるのかと聞こうとしたら「テメェ!!」と大きな声で言うからビックリして尻餅をついてしまった。

「テメェに会う口実が作れねぇだろぉが!!」と北城はそのままの勢いで言ってのけた。わたしは衝撃的な言葉に、北城自身は思わず出てしまったことに呆然としてしまう。

数秒後、互いに顔を赤くしたわたし達は北城の家を教えてもらう事で取り敢えずは解決した。けれど、わたし達の関係はまだ解決しそうにない。チビが嬉しそうにニィ、と鳴いて、わたしは静かに溜息を吐いたのだった。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -