まよい子



 泣くのはおやめ、そう言いさとして摩緒は幼子を軽々と抱き上げた。
 目の高さを同じくすると、迷子ははたと涙を止めて透き通るようなその瞳に見入った。私がいくらあやしても落ち着かなかったのに、と菜花はその横顔に感心の眼差しを向けた。よわい九百ともなればおのずと泣く子も黙る貫禄が備わるものなのかもしれない。元気を取り戻した子供は無邪気なもので、摩緒のかけ外したシャツのボタンを引っ張ったり、頬をつねって餅のように伸ばそうとしたりする。何をされても泰然として動じる気配のない彼に、菜花はつい吹き出してしまった。その拍子に彼の視線が流れてきたので、まだ笑いをこらえながら、
「お母さん、捜してあげなくていいの?」
「尋ねる人がいるなら、むやみに動かない方がいい」
 ほらお姉さんだよ、と摩緒は肩を傾けて子供を菜花に近づけてくる。あっと予感が働いた時には、すでに彼女の頬は腕白な幼子の玩具おもちゃにされていた。いいようにもてあそばれる彼女を、陰陽師が赤く腫らした頬を少し緩めて見下ろしていた。



2020.10.18
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