月より団子


 いつものように、時計台で待ち人を出迎える。今夜の彼女は手土産を携えてきたようだ。その腕の中でまどろむように頭を垂れる、芒の穂。
「向こうでは、今日が十五夜なの」
 ハクはその贈り物を白い瓶に差し入れた。開け放した窓から二人の食卓まで訪ねてきた夜風が、千尋の顔の側に垂れる淡い白穂をはらはらと揺らした。千尋が笑うたび、彼女の瞳に夜空の光がちらちらと躍った。折しも不思議の町もまた満月の夜である。
「千尋、そのまま月を見ていて」
 彼は夜空に向かって箸を伸ばした。そして二本の箸先の間に丸い月をおさめると、片手を添えながらゆっくりと千尋の眼前へ運んでいった。
「千尋。──さあ、お食べ」
 千尋ははにかむように目を伏せつつ、小さな口をそっと開けてみせた。


20.10.01(十五夜)
Boule de Neige

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