薄 紅 葉

「みんなのところに帰らなくていいの?」
 顔を背けて彼女は言う。めずらしく突き放すような物言いが、りんねをまごつかせた。
「真宮桜が帰らないなら……」
「いいよ、別に。気を使わなくても」
 桜の唇から小さな溜息がこぼれた。
「ひとりで、本当に大丈夫だから」
 そう言われて大人しく引き下がるりんねではない。心もとない顔つきながらも、言葉だけは負けず劣らずの強情さで返した。
「話してくれるまで、ここにいる」
 彼女はもう一度嘆息した。りんねが折れそうにないことを知り、渋々ながらも口を割る。
「──私、心が狭いのかな。なんだか、どんどんいやな人間になっていくみたい」
「……真宮桜が? そんなはずはない」
「本当なの。さっき、鳳が六道くんにくっついているのを見て、私、すごくいやな気持ちになったの。──お願い、他の子に優しくしないで、って」
 落ち葉を踏みしめながら振り向いた桜の表情は、自分自身を責め立てているようだった。心根の優しい彼女だからそうせずにはいられないのだろう。
 にもかかわらず、その顔を目の当たりにしたりんねは不謹慎にも、胸の内に喜びがじわじわと広がっていくのを止められない。
 いやな人間なものか。
 もしそうだとしても、構わない、もっと「真宮桜」を見せてほしい──
 そんなことを言ってしまえば最後だとわかるから、決して口にはできないのだが。




文字書きワードパレット
9. 射手座「葉」「背ける」「最後」

六花様より


2019.10.20



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